石屋の私が、自分のお墓を建てるなら
2026年11月1日(日)
こんにちは。
川崎市多摩区の石屋、吉澤石材店の吉澤です。
石屋という仕事柄、さまざまな石に触れ、
多くのお墓を建てる機会に恵まれました。
では、
そんな石屋が自分のお墓を建てるとしたら、
どんなお墓を選ぶのでしょうか。
実は私の場合、形と仕上げについては、
もう答えが決まっています。
叩き仕上げの五輪塔です。
石の種類については、特に決めていません。
ただ、国産の白系の石で、
叩き仕上げがよく映えるものを
選びたいと思います。
白系といっても、
淡い桜色を帯びた万成石なども、その一つです。
五輪塔という形が好き
私が五輪塔を選ぶ一番の理由は、
何といっても、その造形が好きだからです。
地・水・火・風・空の五つを表す
最高の仏塔のひとつであり、
私自身が真言宗ということもあって、
心を惹かれます。
ただ、それ以上に、
一基の石塔として見たときの
美しさが好きなのです。
特に、奈良に残る古い五輪塔などに見られる、
素朴で落ち着いた姿には強く惹かれます。
繰形座、あるいは反花座があってもいいし、
なくてもいい。
大きさにも特別なこだわりはありません。
石造美術的に優れているとされる古い五輪塔は
好きですが、寸法をそっくり写すのではなく、
一基の塔として眺めたときに、
「ああ、いいな」と思えるもの。
言葉で説明するのは難しいのですが、
そんな五輪塔が好きです。
もちろん、宝篋印塔や宝塔にも魅力を感じます。
それでも自分のために一基選ぶなら、
やはり五輪塔ですかね。
なぜ、叩き仕上げなのか
五輪塔という形と同じくらい、
私がこだわりたいのが石の仕上げ方です。
まず、こちらの写真をご覧ください。

【万成石・本磨き仕上げの洋型石塔/2023年10月建立】
岡山県産の万成石を使い、
本磨き仕上げで建立させていただいたお墓です。
磨き仕上げには、磨き仕上げならではの
美しさがあります。
石の色や石目がよく表れ、
周囲の景色が映り込むほどの光沢が生まれます。
表面が滑らかなため、汚れが付きにくく、
お手入れもしやすい。
私も磨き仕上げの美しさは好きです。
では、こちらはどうでしょう。

【万成石・叩き仕上げの五輪塔/2022年8月建立】
こちらも同じ万成石を使った、
叩き仕上げの五輪塔です。
二つのお墓は同じお寺の境内にあり、
墓所の位置も近く、環境的にはほぼ同じです。
(五輪塔の右背後に洋型石塔が写っています)
それでも、仕上げ方によって
石の表情はずいぶん変わります。
石は冬には触れると冷たく、
夏の日差しを浴びれば熱くなります。
ところが、叩き仕上げにすると、
そうしたこととは別に、
不思議と温かみを感じるのです。
年月とともに変わっていく石の表情
ただ、叩き仕上げには、
知っておいていただきたい特徴もあります。
こちらの写真をご覧ください。

【近隣墓所の外柵・叩き仕上げと磨き仕上げの比較】
先ほどの万成石のお墓とは別の、
近くにあるお墓の外柵です。
同じような環境に置かれた石でも、
仕上げによって汚れの付き方が
違うことが分かります。
叩き仕上げの部分は、
もともとはかなり白っぽい石だったはず。
それが、年月を経て黒ずんでいます。
叩き仕上げは表面に細かな凹凸があるため、
磨き仕上げに比べて汚れが付きやすく、
落としにくいという特徴があります。
新しく建てたときの明るい色合いを
できるだけ長く保ちたい方には、
磨き仕上げの方が向いているでしょう。
けれども、私はこの変化に魅力を感じます。
建てたばかりの叩き仕上げも美しい。
そして、年月を重ねて黒ずみが生じ、
少しずつ自然な風合いに近づいていく姿もいい。
さらに時間を重ねれば、いずれは
古い石造物に見られるような風格が
出てくることでしょう。

【石肌に味わいが生まれはじめた石塔の基礎部分】
石は長い年月、その形を留めてくれる素材です。
一方、表面の色合いや風合いは、
風雨にさらされて少しずつ変わっていきます。
私は、その変化も含めて
「石の持つ魅力」であると思っています。
もちろん、黒ずみを味わいと感じる方もいれば、
汚れとして気になる方もいるでしょう。
だからこそ、叩き仕上げは、
その変化も含めて気に入っていただける方に
選んでほしいと思うのです。
実際の五輪塔を見に、奈良まで
以前、五輪塔を建てさせていただいた
お客様のことです。
お話をする中で、奈良の西大寺奥の院にある
叡尊五輪塔のことをご紹介しました。
すると、そのお客様は、実際に奈良まで
その五輪塔を見に行かれたそうです。
「えっ、本当に行かれたんですか!」
後日、その話を伺ったときには驚きました。
実物をご覧になり、「ああ、こういうのがいい」
と感じられたそうです。
五輪塔にそこまで関心を持っていただき、
とても嬉しかったですね。
そして、そのお客様には真壁小目石を使った、
磨き仕上げの五輪塔を
建立させていただきました。
私自身が選ぶなら叩き仕上げですが、
お客様が選ばれたのは磨き仕上げ。
でも、それも素晴らしい選択だと思います。
お墓の形には、もっと選択肢がある
お墓を建てようと思ったとき、
和型にするか、洋型にするか。
そんなところから考え始める方も
多いと思います。
けれども、決して和と洋、二つの形から
選ばなければならないわけではないのです。
五輪塔や宝篋印塔、宝塔など、
古くから造られてきた仏塔もあります。
そして、五輪塔一つをとっても、
その造形はさまざまです。
五つの部材があるのは同じでも、
火輪の軒の反りや水輪の形、
また基礎の反花(かえりばな)の形など、
各部分の造形にも違いがあります。
五輪塔は加工に手間がかかるため、
一般的な石塔より費用はかさみます。
叩き仕上げとなれば、
さらに加工の手間もかかります。
それでも、その美しい姿や仏塔としての意味を
知ったとき、
「こんなお墓もあるんだ」
「亡くなった家族のために、
こういうお墓を建てたい」
そう感じる方もいらっしゃるかもしれません。
私は、お墓にはそうした選択肢があることを
知っていただきたいと思っています。
もし五輪塔に興味を持たれたら、
ぜひ実際に建っているものを
ご覧いただくことをお勧めします。
写真で見るのと、実物を見るのとでは、
感じ方もまったく違うものです。
これは石屋として断言できます。
これからの姿も楽しみ
ありがたいことに、これまで何基も
叩き仕上げの五輪塔を選んでいただき、
建立してきました。
それぞれがこれからどんな年月を重ね、
どんな姿になっていくのか。
私は、その変化を楽しみにしています。
まして、それが自分のお墓だったら。
そう思うと、
きっとすごく楽しみになるでしょうね。
だから、私が建てたい自分のお墓は
叩き仕上げの五輪塔一択なのです。
では。
【関連記事】
・五輪塔というお墓の提案
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