新しい仏様しかいない家は、五輪塔を建ててはいけないのか
2026年8月6日(木)
こんにちは。
川崎市多摩区の石屋、吉澤石材店の吉澤です。
昨日は、「五輪塔は、特別な家だけのお墓では
ありません。」という記事を書きました。
今日は、その記事を書きながら思い出した、
一基の五輪塔について書いてみます。
2018年、緑ヶ丘霊園に建てさせていただいた、
犬島石の叩き仕上げによる五輪塔です。

亡くなったご家族のために、
きちんとしたお墓を建てたいと考え、
最初に別の石屋さんへ相談されたそうです。
その時、五輪塔の話をすると、
「お宅は新しい仏様しかいない家だから、
五輪塔は建てるべきではない。」
と言われたそうです。
さらに、「形が複雑だから、汚れますよ。」
とも言われたと伺いました。
私は、そのお話を聞いて、
「そんなことはありません。
何にも心配ありませんよ。」
と、お伝えしました。
五輪塔は、最高の仏塔のひとつ。
普通のお墓として、最初から五輪塔を建てても、
何の問題もありません。
また、和型石塔とは別に、ご先祖を供養する
供養塔として建てることもできます。
つまり万能です。
この時には、「亡くなった方のために、
五輪塔でお墓を建てられたら、
こんなに良い供養はありません。」
そんなお話もさせていただきました。
その時点では、どのようなお墓を建てるかは、
まだ決まっていなかったと思います。
その後、事務所に貼ってあった
叩き仕上げの五輪塔のポスターをご覧になって、
「これは何ですか。」
と聞かれました。
石の表面を磨かず、
一つ一つ叩いて仕上げた五輪塔であること。
また、磨き仕上げよりも手間が掛かり、
費用も高くなること。
そのことをご説明しました。
実は、この時はまだ、叩き仕上げの五輪塔を
建てたことがありませんでした。
かなり高額になるだろうと思っていましたので、
正直なところ、
叩き仕上げまでは選ばれないかもしれない。
そんなことも思っていました。
ところが、そのお客様は
「見積もりをしてみてください。」
と言ってくださったのです。
こうして完成したのが、
犬島石・叩き仕上げによる五輪塔です。

五輪塔と墓誌には犬島石を使い、
外柵には中国産の白御影石を使いました。
私が初めて建てさせていただいた、
叩き仕上げの五輪塔でもありました。
建立から一年以上経った頃だったと思います。
線香立ての金具がなくなってしまった
ことがあり、新しいものをお届けに伺いました。
その時、お客様が、
「親戚の人に、すごくいいお墓が建ったねって
言われたのよ。」
と、うれしそうに話してくださいました。
そして、
「本当に、あのお墓にして良かった。」
とも言っていただきました。
最初は、五輪塔を建ててよいのかと、
不安を抱えていらっしゃったお客様です。
後になって、そのお客様から
そんな言葉をいただけたことが、
私は本当にうれしかったのです。
自分なりに石塔について学んできたからこそ、
自信を持って、「何にも心配ありません。」
と、お話しすることができました。
その言葉で、お客様が抱えていた不安を
少しでも解くことができたのなら、石屋として、
こんなにうれしいことはありません。
あれから、もう8年近くになります。
今では石も少しずつエイジングし、建てた頃とは
また違った雰囲気をまとってきました。

一見すれば、汚れとも見える黒ずみです。
けれども、そうしたものを身にまといながら、
人の手で形づくられた五輪塔が、
少しずつ自然になじんでいくようにも見えます。
石は、もともと自然の産物です。
そこへ雨や風、年月が重なり、
建てた頃にはなかった深みが加わってきました。

今でもその前に立つと、石の表情だけでなく、
お客様とのやり取りまで思い出します。
そして、
「本当に、あのお墓にして良かった。」
と言っていただいた、あの日の言葉も
一緒によみがえります。
私にとって、今でも忘れることのできない、
思い出深い一基です。
では。
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