黒い墓石は縁起が悪い?──石の色で家の吉凶は決まりません

2026年8月9日(日)


こんにちは。
川崎市多摩区の石屋、吉澤石材店の吉澤です。

昨日は、こんな電話相談がありました。

「うちのお墓は黒い石塔なのですが、
黒いお墓はよくないのでしょうか」

話を聞いてみると、
黒い墓石は縁起が悪いとか、家が絶えるとか、
そんな話をネットで読んだそうです。

実際のお墓も見ていません。
ご家族の状況も詳しくは聞けませんでした。

そのうえで一般論として、お答えしました。
「そんなことは心配しなくていいと思いますよ」

ところが、話を聞いていると、
ネットで見ただけではなく、
お寺のお坊さんからも似たようなことを
言われたというのです。

かなり心配されていたようです。
ただ、これには少々驚きました。

仏塔の形についてなら、まだ分かります。

宗派によって考え方が違うこともありますし、
この形にはこういう意味がある、
という話なら、なるほどと思う部分もあります。

しかし、石の「色」です。

黒い石だからよくない。
黒い石塔を建てると家が絶える。

そこまでの話になると、
私はちょっと疑問に感じざるを得ません。

昔は、今ほど石材の流通経路が
発達していませんでした。

そのため、墓石に使う石も、
その土地や比較的近いところで採れる石が
中心だったはずです。

たとえば白系御影石ばかり使われてきた地域で、
見慣れない黒っぽい石塔が建てば、
「変わった墓だ」
と思われたことはあったかもしれません。

そこから何かの言い伝えや俗信が生まれた
というのなら、まだ話としては分かります。

しかし、黒っぽい石が採れる土地なら、
その土地の人は当然その石を使ったでしょう。

近くに良い石があるのに、
「黒いから墓には使えない」
と言って、わざわざ遠くから白い石を
運んできたとは考えにくい。

その土地で採れる良い石として、
大切に使われてきたはずです。

福島県産・浮金石。日本を代表する国産の黒御影石です。家紋を彫っている部分や香炉穴は磨きが飛んでおり、石の地の色が出ています。

それとは別の話として、昔の「黒い石」と、
今私たちが目にする黒御影石を、
そのまま同じように考えていいのか
という疑問もあります。

昔は、今のような研磨技術が
あったわけではありません。

同じ黒っぽい石でも、
叩きやノミで仕上げれば
かなり白っぽく見えます。

磨けば濃く見える。
叩けば淡く見える。

これは石の特性でもあります。

では、どこからが黒なのでしょう。

薄いグレーはよくて、
濃いグレーになるといけないのでしょうか。

同じ石でも、仕上げを変えたら
吉凶まで変わるのでしょうか。

そこまで考えると、
石の色と家の吉凶を結びつけること自体に、
無理があると思います。

今は、全国各地どころか
世界中から石が入ってきます。

インド産・クンナム。深い黒が特徴の黒御影石です。こちらも文字を彫った部分は磨きが飛び、石の地の色が現れています。

白い石も、青みのある石も、赤い石も、
緑の石も、そして黒い石もある。

その中から、お施主様が好みや石質、予算などを
考えて選びます。

そこで今になって、「黒い墓石だからよくない」
と言われても、
いつの時代の、どこの地域の話なのだろうか。
私はそう思います。

そして今回、私が一番引っかかったのは、
石の色そのものよりも、
そのお墓を建てた人の気持ちです。

誰かを亡くし、その人を供養するために
石を選び、お墓を建てた。

ご先祖の供養を願い、
亡くなった人の冥福を願って建てたお墓です。

私は、そこに吉も凶もないと思っています。
あるのはただ「善」です。

亡くなった人を思い、
供養したいと思ってお墓を建てる。

その行為そのものが、善いものです。

そのお墓を後になって見て、
「この色はよくない」
「家が絶える」
と言う。

石の色以前に、
そのお墓を建てた人の気持ちはどうなるのか。

この点については、
私はかなりはっきりしています。

どれほどよく当たると評判の占い師が言おうと、
どれほど有名な高僧が言おうと、

「黒い墓石だから家が絶える」

そんな話は違うと、私は言い切ります。

誰が言ったかではなく、何を言っているかです。

少々乱暴かもしれませんが、
占いも、宗教も、人をより幸せにしたり、
心を支えたりするためのものでしょう。

それなのに、
ご先祖の供養を願って建てたお墓を見て、

「その石はよくない」
「家が絶えるかもしれない」

と人を不安にさせて、
いったい何になるのでしょうか。

私は決して、「黒い石で建てればいい」
と言っているわけではありません。

昔から「黒いお墓はよくない」と耳にして、
どうしても気になる人もいるはずです。

これからお墓を建てるとき、
あるいは建て替えるときに、

「やっぱり黒は気になる」

と思うのであれば、
別の色の石を選べばいいと思います。

お墓は、
これから長く手を合わせていく場所です。

見るたびに、
「本当にこれでよかったのかな」
と気になるくらいなら、
自分が安心できる石を選んだ方がいい。

反対に、黒い石が好きなのに、
「黒はよくない」
「家が絶える」
とされるからと、諦める必要もありません。

白でも、グレーでも、黒でもいい。

不安を煽られて選ぶのではなく、
自分が納得して選べばいいのだと思います。

石の色で人を不安にさせるのではなく、
その不安を取り除いた上で、
安心して好きな石を選んでいただく。

石屋として、私はそれが大切だと思っています。

では。


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