「今日よりも明日」という価値観を、この国は忘れてしまったのか
2026年10月11日(日)
こんにちは。
川崎市多摩区の石屋、吉澤石材店の吉澤です。
今から30年、40年ほど前のことです。
「ディンクス(DINKs)」という言葉が、
盛んに使われていた時代がありました。
共働きで、子どもを持たず、
夫婦二人の生活を楽しむ。
仕事をして得た収入を、旅行や外食、趣味など、
自分たちのために自由に使う。
そんな生き方が、都会的で、
時代の先端を行く新しい夫婦像として、
雑誌やテレビなどで盛んに紹介されていました。
当時のことを覚えている方もいるでしょう。
最初に断っておきますが、
ここで言っているのは、
子どもが欲しくても授からなかった
ご夫婦のことではありません。
そして、子どもを持つかどうかは、
それぞれの夫婦が決めることです。
ただ、私が疑問に思うのは、
ディンクスという考え方、生き方が、
時代の先端を行く格好いいものとして、
社会からもてはやされていたことです。
その先に何があるのか。
当時のマスコミも、政治も、行政も、
何十年か先の日本の姿をどれほど真剣に
考えていたのかなと。
日本はかつて、世界第2位の経済大国でした。
豊富な労働力、大きな国内市場、
そして経済成長。
人口の多さが日本の発展を支えたことは
間違いないでしょう。
一方で、国土の広さなどを考えれば、
人口が増えすぎたという側面も
もしかしたら、あったのかもしれません。
だからといって、急激な人口減少を、
そのまま受け入れるわけにはいきません。
人口が減れば、働く人も減る。
地域を支える人も減る。
これまで当たり前のように維持されてきた
社会の仕組みそのものが、
成り立たなくなるかもしれない。
そんな時代が、すでに始まっています。
もちろん、少子化の原因を
ディンクスという一つの流行だけに
求めてはいません。
しかし、
目の前の豊かさや自由ばかりを追い求め、
その先にある社会の姿を
十分に考えてこなかった。
そして、政治も行政も、
これほど重大な問題に対して、
長年にわたり実効性のある施策を
打ち出すことができなかった。
そのことは、
もっと厳しく振り返る必要があると思います。
昔は「今日よりも明日」という考え方が、
今よりずっと強かったように思います。
自分たちが苦労しても、
子どもには少しでも良い暮らしをさせたい。
そして、その子どもたちが、
また次の世代へ何かを残していく。
そうした積み重ねによって、
家族も地域も、社会も続いてきました。
以前、このブログで
縦糸と横糸の話を書いたことがあります。
親から子へ、子から孫へと続く縦のつながり。
家族や親族、友人、地域社会との横のつながり。
縦糸と横糸が織り合わされて
一枚の布になるように、社会もまた、
人と人とのつながりによって
形づくられているのだと思います。
昔の人は、そんなことをわざわざ理屈にして
考えてもみなかったことでしょう。
明日はもっといい日になる。
皆、疑いもなくそう思っていたような
気がします。
自分たちが受け継いできたものを、
次の世代へ引き渡していくという感覚は、
暮らしの中に自然にあったのではないでしょうか。
ところが今はどうでしょう。
何かを次の世代に残すということが、
いつの間にか「負担を残す」という言葉に
置き換えられてしまったように感じるのです。
お墓の問題は、まさにその一つです。
最近は、墓じまいの費用や、
お墓を維持する負担についての話を、
頻繁に目にします。
確かに、承継する人がいなければ、
お墓を維持していくことは難しくなります。
それぞれの家庭に事情があることも、
石屋としてよくわかっています。
ただ、本当に考えなければならないのは、
もっと大きなことです。
家が続かなくなる。
地域のつながりが失われる。
そして、長く受け継がれてきた
この国の文化や習慣が途絶えていく。
お墓がなくなることも、
そうした社会の変化の中で起きていることの
一つだと私は感じています。
もちろん、時代は変わります。
そして、変わらなければならないことも
あるでしょう。
しかし、変わっていくことと、
受け継いできたものを
次々と手放してしまうことは、
決して同じではないはずです。

この先、日本の人口は
さらに減っていくと予測されています。
かつての人口規模を取り戻すことが難しいのなら、
人口が減っても人々が豊かに暮らし、
地域や文化を次の世代へ引き継げる国を、
今から考えていかなければならないでしょう。
今の段階から、
何十年先の人口や経済、社会の姿を
綿密にシミュレーションし、日本という国を
どのような形で存続させていくのか、
国家としてのグランドデザインを
描く必要があります。
選挙に勝つことや、
目先の政策で成果を上げることばかりに
とらわれていては、
日本の将来を託すことなどできません。
政治家にも官僚にも、
自分たちがいなくなった後の日本にまで
責任を持つ。
そんな覚悟が求められていると思います。
何十年、何百年か先、後世の人たちは
今の日本をどう評価するのでしょう。
私たちは今、
自分たちが受け継いできたものの中から、
次の世代に何を残すのかという視点で、
もう一度考える必要があると思います。
「今日よりも明日」。
かつて当たり前のようにあったこの考え方を、
今こそ取り戻さなければならないと思います。
では。
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