目地の数ミリ、墓誌まわりの数センチ。お墓の図面で考えること
2026年6月21日(日)
こんにちは。
川崎市多摩区の石屋、吉澤石材店の吉澤です。
お墓の図面を引くときには、
全体の形だけではなく、
どのくらいの長さ、大きさの石を使うのか。
そんなことも考えながら作成していきます。

実際の作図画面。部材ごとに寸法と目地を決めていく。
どのくらいの大きさ(長さ)までなら
採れるのか。
それは石の種類によって異なるからです。
また、あわせて現場での作業性や
運搬性のことも考えます。
そして、石と石のあいだのクリアランス、
目地の幅も考えながらの作業です。
弊社では、接着剤工法の場合、
目地幅を1.5分(4.5ミリ)基準で考えています。
たった数ミリの話です。
でも、この数ミリ、いい加減にはできません。
接着剤工法で使う弾性接着剤は、
ただ石と石をくっつけるだけのものでは
ありません。
石のわずかな動きに追従しながら、
接着力を保つためのものです。
その性質を生かすには、
適切な目地幅が絶対に必要なのです。
つまり目地は、お墓を長く保つために
不可欠な要素ともいえるかもしれません。
もし図面で目地を間違えると、
現場で慌てることになります。
削ったり切ったりで間に合えばまだいい方で、
寸法が足りなければ、まさにお手上げです。
同じように、建てたあとのことを考えると、
もう一つ墓所設計で大事になるのが、
墓誌まわりの空間の取り方です。
以前、こんなお墓を見かけました。
洋型の石塔のすぐ脇に、墓誌が建っている。
敷地が小さいので、
お隣には和型の石塔も迫っています。

石塔のすぐ脇に墓誌が迫る例。詰め込むと窮屈な印象になりがちです。
都内などでは、よく見かけるコンパクトな
お墓ですよね。
建てたときは見た目も立派で、
墓誌があれば戒名を刻む場所もできます。
ちょっと見には、いいことずくめのようですね。
でも私なら、この配置の仕方はお勧めしません。
もちろん、このお墓を建てた石屋さんの考えを、
どうこう言いたいわけではありません。
ただ、こういう配置にすると、
あとから戒名を彫るときに困ることがあります。
つまり、石塔と墓誌の隙間が狭いと、
現場でそのまま彫ることができなくなるのです。

石塔と墓誌の隙間が狭いと、刻まれた文字が見えにくく、あとからの彫刻作業も難しくなります。
墓誌を一度外そうにも、無理な力をかければ、
隣のお墓や墓誌そのものを傷つけかねません。
そして、一度うまくいったから次も大丈夫とは
限らないのが頭の痛いところ。
また、首尾よく彫れたとしても、
狭い隙間の奥に刻んだ文字は、
かなり見にくいものです。
ご家族の戒名や名前が、
このように見にくい状態でいいのだろうか。
私は、そう思ってしまうのです。
では、こういう限られた場所のとき、
私ならどうするか。
そもそも、
無理に墓誌を建てることはしません。
代わりに、戒名をどこに、
どう刻むかを工夫します。
棹石の側面や裏側に直接彫ることもありますし、
お墓の設計を変更して、前の蓋石に刻む
「前蓋型墓誌」にすることもあります。
限られた場所だからこそ、
ぎゅうぎゅうに詰め込まない。
見た目に余裕があるほうが窮屈に感じませんし、
あとあとのお手入れもしやすくなります。
建てたときに立派に見えることも、
もちろん大切です。
でも、その見た目だけを優先して、
いっぱいに詰め込んでしまうと、
あとで困ることがあるのです。
目地の数ミリ。墓誌まわりの数センチ。
図面の上では小さな寸法に見えますが、
お墓を建てたあとのメンテナンス性を
左右するとなると、
気にしないわけにはいきません。
お墓を建てるということは、
見た目の立派さや豪華さを競うわけでは
ありません。
そして、つくる側も
今だけを見て図面を引くのではなく、
将来のことも考える。
文字を刻むこと。掃除をすること。
お参りをするときのこと。
そうしたことを一つずつ想像しながら、
お墓を設計していくことが
とても大切なことなのだと、私は考えます。
では。
※「狭い敷地は不利」と思われがちですが、工夫しだいで使いやすく仕上がります。以前の記事ですが、コンパクトなお墓の良さを書いています。
【関連記事】お墓の敷地。狭けりゃ狭いなりの良さがある
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