古い石造物と、今建てるお墓をつなぐもの
2026年6月14日(日)
こんにちは。
川崎市多摩区の石屋、吉澤石材店の吉澤です。
仕事休みの日に、
古い石造物を見に出ることがあります。
五輪塔、宝篋印塔、石仏。
こうしたものを見るのが、元々好きなのです。
例えば、奈良の當麻北墓という墓地には、
大きな五輪塔が立っています。
平安時代後期の建立とされています。

當麻北墓に建つ大きな五輪塔。古い石造物と、今のお墓が同じ墓地の中に並んでいます。
長い年月を受け、
表面は白っぽい地衣類に覆われて、
ところどころに苔も見えます。
輪郭もやわらかくなっています。
それでも、水輪にも地輪にも、
刻まれた梵字がまだ読み取れます。
これだけ時間を受けても、石はまだ形を留め、
刻まれたものを残しています。

地輪に薬研彫りで刻まれた梵字
確かに、時代が違います。
形も違います。
石を建てた人たちの暮らしも、今とは違います。
当時、これだけの大きな五輪塔を建てるには、
とても大きな力が必要だったことでしょう。
だから、古い石造物と、
今建てているお墓をまったく同じものとして
見ることはできません。
けれども私は、
まったく別のものとしても見たくありません。
お墓としての本質に、
変わらないものがあると思うからです。
それは、亡くなった人の供養のために
建てられた石造物である、ということです。
もちろん、
すべてが同じ意味で建てられたわけではない。
信仰のために建てられたもの、
聖地に奉納されたもの、
供養や祈りのしるしとして置かれたものも
あるはずです。
意味や形はそれぞれ違っていても、
人の思いや祈りはそこにあったのだと思います。
そして、もう一つ変わらないことがあります。
それが、石で作られているということです。
石は、時間を受け止めます。
雨に濡れ、日を浴び、風を受け、苔がつき、
風化しながら、少しずつ輪郭をやわらげていきます。
それでも、形を保ち、刻まれたものを残し、
その場所に在り続ける力があります。
そして今、私たちが建てているお墓も、
建った瞬間だけのものではありません。
完成したときの見た目は大事です。
石の色、形、文字の見え方。
お客様にきちんとお渡しする仕事として、
そこをおろそかにはできません。
そして、建てられたお墓は、
引き渡したあとも同じ場所に立ち続けます。
雨に濡れ、日を浴び、
家族が手を合わせる場として、
その場所に残っていく。
古い五輪塔が、今のお墓と
まったく同じだとは言いません。
でも、別のものとして
切り離すことだってできません。
亡くなった人のために建てられたこと。
そして、それが石で作られていること。
そこに、古い石造物と
今のお墓をつなぐものがあると私は思います。
私は、今建てるお墓を、
ただの商品としてだけ見たくありません。
古い石造物を見ると、
そのことを改めて考えます。
「造塔供養」という言葉があります。
石塔を建てることそのものが、
亡くなった人への供養であり、
祈りのしるしでもあった。
為書きのように、
何のために建てられたのかが
刻まれているものもあります。
石塔を建てた人の思いは、
そうした文字や姿の中に残っています。
今建てるお墓も、
遠い将来どういう姿になるかは分かりません。
簡単に歴史的な石造物になるわけでもないでしょう。
それでも、石で造られた供養のかたちとして、
時間の中に残っていく。
そのことを忘れずに、
日々の仕事をしていきたいと思っています。
では。
※お墓が持つ意味について、こちらの記事でも書いています。
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