お墓の文字は、彫り方で見え方が変わります。彫り込み・サライ仕上げ・縁彫りの違い
2026年5月28日(木)
こんにちは。
川崎市多摩区の石屋、吉澤石材店の吉澤です。
お墓に彫る文字には、
いくつかの仕上げ方があります。
石塔に文字を彫るというと、
一見どれも同じように思われるかもしれません。
けれど実際には、
文字の彫り方や仕上げ方によって、
見え方も、印象も、少しずつ変わります。
一般的によく行われるのは、サンドブラストで
文字の部分を彫り込む方法です。
文字そのものを石に彫り込むため、
光の当たり方によって陰影が出ます。

サンドブラストによる彫り込み仕上げの例です。
昔からよく見る、
いわゆるお墓らしい文字彫刻の方法です。
ただ、同じ彫り込みでも、
そこからさらに手を入れる仕上げがあります。
それが「サライ(浚い)仕上げ」です。
サンドブラストで彫り込んだ文字の底を、
ノミで浚って整える仕上げです。
現在はエアチッパーという機械を使い、
文字の底の部分を叩くようにして整えます。
サライ仕上げをすると、
文字の底に細かなノミ跡が付きます。
その跡に光が当たることで、
光が乱反射し、文字が見えやすくなります。
単に彫り込んだだけの文字よりも、
一段手が入ることで、文字がより引き立ちます。

サライ仕上げを行った文字の例です。文字の底に表情が出ます。
ただし、サライ仕上げには手間がかかります。
その分、通常の文字彫刻より費用もかかります。
また、同じ彫り込みでも、
ブラスト仕上げだけの場合と、
サライ仕上げをする場合では、
彫り込みの深さは、少し変わります。
サライ仕上げの場合は、
文字の中にノミを入れて字底を整える必要が
あるため、あまり深く彫り込みすぎると
作業がしにくくなります。

サライ加工済み部分と未処理部分の違いが分かるよう、注釈を加えています。
そのため、
サライ仕上げを前提にする場合は、
彫り込みの深さは、ブラスト仕上げより
やや浅めになります。
こういうところは、
完成したお墓を見ただけでは
分かりにくい部分かもしれません。
当店では、寺院墓地のお仕事では、
サライ仕上げを行うことが比較的多くあります。
一方で、市営霊園では、
通常のサンドブラストによる彫り込み仕上げで
納めることも多いです。
もちろん、市営霊園でも
「サライ仕上げにしてほしい」と
ご希望いただいたこともあります。
ですから、寺院墓地だからこう、
市営霊園だからこう、
とは一概には言えません。
ただ、墓地の雰囲気や、
周囲のお墓との兼ね合いはあります。
お墓は一基だけで見るものではなく、
墓地全体の中に建つものです。
周りのお墓が
どのような文字の仕上げになっているか。
同じ墓域の中で、どのように見えるか。
そうしたことも、
仕上げを考えるうえでは無視できません。
もう一つ、最近見かけることが増えた仕上げに、
「縁彫り」があります。
縁彫りは、
文字そのものを深く彫り込むのではなく、
文字の縁の部分を深めに彫り、
内側の磨きを少し落とすような仕上げです。

縁彫りの例です。文字の縁を彫り、内側の磨きを落として見せる仕上げです。
色の濃い石に行うと、
文字がはっきりとして見えやすい。
見る角度が少し変わっても、
文字の形が分かりやすい。
そういう良さがあります。
実際に、川崎市営緑ヶ丘霊園の1㎡墓所などを
見ていても、縁彫りの仕上げをしたお墓は
結構多くあります。
参考までに、当店のお客様では、
従来のような彫り込みを選ばれる方も多いです。
ただ、これはどちらが良い、悪いという
話ではありません。
仕上げの好み。
石の色。
石塔の形。
文字を彫る面の厚みや角度。
そうした条件によって、
合う仕上げは変わります。
私個人の感覚で言えば、
薄い石に文字を入れる場合、
縁彫りはとても良い仕上げだと思います。
深く彫り込みすぎずに
文字を見せることができますし、
色の濃い石であれば、文字もはっきり出ます。
一方で、奥行き(厚み)のある石の場合は、
しっかり彫り込んだ文字にも良さがあります。
光の当たり方で影が出たり、
文字に奥行きが感じられたりするからです。
そこを好む方にとっては、
縁彫りは少し平面的に感じるかもしれません。
私自身も、石によっては、
少し面白みに欠けるかなと
感じることがあります。
ただし、洋型石塔の場合には、
文字を彫る面が斜めになっているものも
多くあります。
その場合、彫り込んだ文字の中に、
雨水や汚れが入りやすい面は否めません。
その点では、縁彫りの方が
汚れが入りにくいという良さもあります。
何が言いたいのかといえば、
つまり、一長一短ということです。
彫り込みが良い。
サライ仕上げが良い。
縁彫りが良い。
そう単純に決められるものではありません。
また、文字の仕上げにも流行があると感じます。
いま多く見かけるようになった縁彫りが、
何十年か後には「あの頃らしい仕上げ」として
見られることもあるのかもしれません。
もちろん、流行しているから悪い、
ということではありません。
ただ、流行しているものは、
いつか時代を感じさせるものになる
可能性もあります。
だからこそ、
今よく見かけるからという理由だけでなく、
石の色や形、お墓全体の雰囲気、
そしてご家族の好みに合っているかを見て
選ぶことが大切だと思います。
お墓の文字は、
石塔の正面に入る大事な部分です。
どのように彫るか。
どのように仕上げるか。
小さな違いのようで、
完成したお墓の印象は変わります。
どれが正解ということではありません。
そのお墓に合った仕上げ、
そして、ご自分がいいと思う仕上げを選ぶこと。
それが一番大切なのだと思います。
では。
※最後までご覧をいただきまして、ありがとうございます。
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