文化庁調査で「手書きは大切」が8割!そこから考えた、お墓に刻む文字の話
2026年10月13日(火)
こんにちは。
川崎市多摩区の石屋、吉澤石材店の吉澤です。
先日、ちょっと興味深いニュースを
目にしました。
文化庁が10月2日に発表した
「国語に関する世論調査」によると、
文字を手書きする習慣について、
80.4%の人が「大切にすべきだと思う」と
答えたそうです。
パソコンやスマートフォンが
これだけ普及した時代に、
8割もの人が手書きを大切にしたいと
思っているんですね。
なんとなく、うれしくなる数字でした。
そして、このニュースを見て、私たち石屋が扱う
お墓の文字のことを思い出しました。
お墓の正面に刻む「○○家之墓」や
「先祖代々之墓」などの文字。
吉澤石材店では、現在は書家の先生に
書いていただいた文字を使っています。
以前は、うちの父親が自分で筆を持って
文字を書いていました。
当時は石屋の親方が自分で文字を書くことも
珍しくなく、字のうまい親方が結構いたものです。
残念ながら、私にはお墓の正面文字を
書けるほどの筆の腕はありません。
ですから、今は書家の先生にお願いしています。
ここでひとつ、
石屋ならではの話があります。
それは、書道が上手な人の文字でも、
石に彫ったときに必ずしも映えるとは
限らないということです。
お墓の文字には、石に彫ることを考えた上での、
文字の力強さや筆の運び方も必要になります。
紙の上では少し強調しすぎかなと感じても、
石に彫ってみると不思議と自然に
見えることがあります。
それから、書家の先生が書いた文字も、
実際に石に彫るまでには、いろいろな調整を
しているんです。

※家名および一部の装飾彫刻は、画像処理により消しています。
たとえば、「田」という文字。
文字の線の部分を彫ると、
内側には4つの石の部分が残ります。
私たちは、この残る部分を
「シマ」と呼んでいます。
文字を彫るときには、このシマが欠けたり、
飛んでしまったりしないように、
考える必要があります。
そのため、書家の先生が書いた文字を
そのまま彫刻するとは限りません。
必要に応じて、文字の形を
わずかに修正することもあります。
また、文字の配置でも不思議なことがあります。
一文字ずつ四角い枠に収めて、
きちんと中心を合わせている。
それなのに、全体を見ると、
なぜか右や左に寄って見えることがある。
わずかに回転しているように
見えることもあります。
書く人それぞれの癖もあります。
そうした場合には、文字をほんの少し
移動させたり、傾きを戻したりして調整します。
数字の上では中心にあっても、
人間の目で見たときに中心に見えるとは
限りません。
偏(へん)と旁(つくり)の
バランスもあるでしょう。
文字というのは、なかなか難しいものです。
それから、うちの父親がよく言っていたのが、
文字の力強さです。
筆がぐっと深く、強く入るところ。
そうした部分は、石に彫る際にも、
その力強さが出るように彫ります。
現在、吉澤石材店では、文字の彫刻を
国内の専門業者にお願いしています。
以前は自分たちでも彫っていましたが、
字彫り用のコンプレッサーが壊れたことを
きっかけに、専門業者に任せるように
なりました。
より高い技術を持つ職人さんに
任せたほうが、良い仕事ができると
考えています。
長くお願いしている業者さんなので、
うちのやり方や私の好みも
よくわかってくれています。
書家に書いてもらった文字の修正や
配置については、必ず確認しながら
打ち合わせをしますが、
もう阿吽の呼吸というところもあります。
逆に、経験豊富な字彫り職人さんから
アドバイスをいただくこともあります。
そうしたやり取りを重ねながら、
文字を仕上げていきます。
もちろん、コンピューターの
フォントを使うこともありますね。
たとえば戒名の追加彫刻。
以前に彫られた戒名がコンピューター文字なら、
新しく彫る戒名も
同じような書体で合わせた方が、
不思議としっくりくるような気がします。
今では石塔(墓石)の正面文字にも
フォントを使う石屋さんが多くなりました。
それはそれで、一つの方法だと思います。
ただ、私は書家の先生が書いた文字が好きです。
手書きの文字には、微妙な不揃いさがあります。
一文字ずつの形や大きさ、線の強弱。
きっちり揃っていないところが、
全体として見るとかえって良かったりする。
うちの父親が書いていた文字は、
比較的自己主張の強い、力のある字でした。
一方、今お願いしている書家の先生の
文字は、ほんの少し控えめな字です。
文字が前に出すぎないことで、
石そのものの良さが引き立っていると感じます。
私は、そういう文字もいいと思っています。
もちろん、
力強く主張する文字にも魅力があります。
どちらにも、
それぞれの良さがあるということです。
お墓は、石の色や形、全体の姿があって、
そこに文字が刻まれます。
文字と石がうまく合ったときに、
そのお墓の良さが出てくると、私は思います。
手書きの習慣を大切にすべきと考える人が8割。
そんなニュースから、
今日はお墓に刻む文字のことを書いてみました。
では。
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