時間が育む仕上げ――犬島石・叩きの五輪塔の七年後
2025年10月26日(日)
こんにちは。川崎市多摩区の石屋、吉澤石材店の吉澤です。
- 2018年・晴れ
- 2025年・雨
建立時の写真は晴れ(薄曇り)の天候、そして今日は雨。条件は正反対ですが、だからこそ石の表情の違いがよく分かります。
全体としては落ち着きが増し、場所に馴染んだ印象があります。もちろん据え付け状態は良好です。地輪や台石、そして花立などの下部は、いい具合にエイジングしてきています。
では、もう少し近くで見てみましょう。
- 2018年・晴れ
- 2025年・雨
雨に濡れているので犬島石の石目がはっきりとしています。また、当たり前のことですが、表面が荒れたり崩れたりしているわけではありません。叩いた面の凹凸が保たれたまま、濡れることで陰影がくっきり出ています。
この石は基本白系とは言いながらわずかに暖色を帯びています。磨いていない石は、雨に濡れるとその石を磨いた時の表情に近い印象になります。
そして、7年という時間がスパイスとなり、五輪塔がまとった味わいは、より深みを増していると思います。いい育ち方をしているなと感じます。
これからも、雰囲気良く育っていくことは間違いないですね。
また、石は天候によっても表情を変えます。

雨に濡れ始めた犬島石五輪塔(2018建立時)
雨の日は雨の表情、晴れの日は晴れの表情。濡れ始めや乾きかけの途中にも、また別の顔があります。表情の変化を楽しめるのが、この叩き仕上げの魅力だと感じます。
犬島石という素材の特長
ところで、この五輪塔に使用した石材は岡山県の犬島石です。犬島石は瀬戸内・犬島の花崗岩で、大阪城の石垣や岡山藩・池田侯の墓所にも用いられた、実績のある堅牢な石です。
埋蔵量が豊富で石傷が少なく、大材を切り出しやすいのもこの石の特長です。さらに「ノミ切り」による“叩き仕上げ”がよく映え、石でありながらも温かみを感じさせるような印象を見る者に与えてくれます。
日本庭園の燈籠や蹲(つくばい)が苔むしていくのと同じように、時間と場所に馴染みながら風合いを重ねていく性格の石だと思います。

犬島石採掘場の一風景
石は時を経て、その場所の一部になっていきます。天候とともに表情を変えながら、静かにそこに在り続ける。そうした存在です。
これから冷え込む季節です。
以前にもブログの記事で触れましたが、濡れた石の上は滑りやすくなります。雨の日や雪の日はどうぞ焦らずゆっくりとお参りくださいね。
では。
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