墓じまいと「放置」――亡き人を主役に戻せ

2026年1月23日(金)


内墓地から境内墓地へ。場所を変えても、亡き人との関係は続いていく。

こんにちは。川崎市多摩区の石屋、吉澤石材店の吉澤です。

Yahoo!ニュースに、
宗教学者・島田裕巳氏の記事が配信されました。

タイトルには「墓を放置する」という選択肢が
掲げられ、離檀料500万円の事例とともに、
「何もしなければ最終的に墓自体がなくなる
可能性がある」
という主張が展開されていました。

読んで、まず思ったことがあります。

「放置」という言葉は、便利です。
何もしない、という響き。中立的で、軽い。

でも、本当にそうでしょうか。

2018年、講演会場で質問をした

私はこの方の講演を、
一度聞いたことがあります。

2018年、「ゼロ葬」「墓は要らない」
を説く内容でした。

質疑応答で、私は手を挙げました。

「先生ご自身は、
いつ墓じまいをされる予定なのですか」

返ってきた答えは、こうでした。

「せっかくあるものだから、壊さずに、
次代の娘の判断に任せます」

そのやり取りの中で、
氏はご自身の家の墓についても触れました。

日蓮宗の寺に先祖代々の墓があり、
「墓があることで安心できる」
といった趣旨の話をされていたのを
覚えています。

少なくともその場では、
墓をなくすのではなく、残す側の選択を
されているように受け取れました。

責任はどこへ行く

私はこれを、人格否定の材料にするつもりは
ありません。

自分の家の墓を残し、娘に委ねる。
それは、ひとつの自然な選択です。

実際に、墓を持つ多くの家がそうしています。

私もそれを批判はしない。

ただ、ご自身の家では墓を残す選択をしながら、
他人には『放置すればいい』と勧める言い方。
これには、どうしても違和感をぬぐえません。

「放置」という言葉は、軽やかに聞こえます。
何もしない、ただしそれだけのように聞こえます。

でも実際には、責任を手放すという選択です。
そして、その負担は自分ではなく、
誰かが引き受けることになる。

放置の先に起きること

放置された墓は、消えません。

石は経年で傾き、地震で倒れます。
隣の墓所にかかれば、そこの家族が困ります。
連絡先が分からなければ、管理者が途方に暮れます。

撤去するにも費用がかかり、
誰が負担するのかで揉めます。

結局、子や孫が突然呼び出されて、
「親が何もしなかったツケ」として返ってくる。

「寺が処分するしかない」
記事にはそうありましたが、
その費用は誰が払うのか。

他の檀家に転嫁されるか、
寺の財政を圧迫するか。

いずれにせよ、誰かが背負います。

放置は、責任を宙吊りにする選択です。

「離檀料」と「放置」を結びつける危うさ

記事に出てくる「離檀料500万円」は、
確かに法外です。
中にはそういう寺もあるのでしょう。
なにも否定はしません。

だが、それは極端な一例であって、
多くの寺と檀家との関係は、
誠実な話し合いで折り合いがつきます。

私はこれまで、幾多の墓じまいに
関わってきましたが、
法外な離檀料でこじれた、という話は
ほとんど聞きません。

問題は、その一例を全体に広げて、
「だから放置すればいい」という結論に飛ぶことです。

500万円を断る権利はあります。
だが、断った後に何もしないことと、
きちんと筋を通すこととは、
まったく別の話です。

先送りと放置は違う

ご自身は、墓を残すことで「安心」を得ている。
墓じまいはせず、娘に判断を委ねる。

これは、先送りです。
人として理解はできます。
多くの人が、そうしています。

ただ、先送りを選ぶなら、
他人に「放置」を軽く勧めるのは雑になります。

先送りと放置は、似ているようで違います。

先送りは、次の世代に選択を託すこと。
放置は、次の世代に揉めごとを残すこと。

その違いを、現場で見てきました。

二択にしない

お墓の主人公は、どこまで行っても亡き人です。
だから私は放置という言葉が、たまらなく悲しい。

なぜ亡き人が、「迷惑」や「負担」にならねば
ならないのでしょうか。

墓じまいを否定するつもりはありません。
離檀料を盲目的に払えとも思いません。

ただ、「放置すればいい」という言葉だけを
答えにしてほしくない。

墓をどうするか、寺とどう向き合うか。
それは家ごとに違います。

簡単に答えが出ない問題だからこそ、
センセーショナルな言葉で割り切るのではなく、
家族で時間をかけて考えてほしい。

放置は、最後の手段にすらなっていません。
それは、後始末を次代に背負わせるだけです。

そして、先送りを自分の家で選んだ人が、
他人には「放置」を軽く勧める構図には、
やはり違和感が残ります。

では。


【参考】
関連コラム:マイベストプロ神奈川(別タブで開きます)
センセーショナルな言葉に踊らされる「葬」にかかわる業界。ここはあえてその言葉の裏を考えてみたい。

※最後までご覧をいただきまして、ありがとうございます。

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