気づくこと。それがお墓を守る第一歩 ―木の根が石を動かす―

2025年10月10日(金)


こんにちは。川崎市多摩区の石屋、吉澤石材店の吉澤です。

今日は川崎市の緑ヶ丘霊園で基礎工事をしていました。

コンクリートを打ち終えて、少し一息ついたときのことです。ふと周りを見回すと、近くのお墓が草木にすっかり覆われていました。(全体画像は載せません)

この区画は、すぐ隣に緑地があります。自然豊かな環境である一方、樹木の種が風で飛んできやすく、お墓の隙間に根を張ることも珍しくありません。

「ああ、お参りに来られていないのかな‥」などと思いながら見ていると、その隣の墓所に目がとまりました。

こちらは草木に覆われているわけではないのですが、何か歪んで見える気がしたのです。

近づくと、墓誌がずれていました。

墓誌がずれた原因については、はっきりとわかりません。もしかしたら、木の枝でも落ちて当たった衝撃かもしれませんし、他の理由かもしれません。

ただ、裏側に回ってみると、塔婆立や羽目石が明らかに動いていました。これは間違いなく、実生の樹木の影響です。

塔婆金具の間に伸びた木の幹

木の成長で後ろに押されてしまった

木の根が石の隙間に入り込み、少しずつ石を押し広げている。そして不思議なことに、塔婆金具の間に伸びた木の枝が、かえって石を支えているようにも見えます。

動かしているのに、支えている――どこか矛盾に満ちた状態です。

今はたまたまバランスが取れているのかもしれませんが、この先どうなるかは分かりません。

緑が多くて気持ちのいい場所ですが、こうした環境では草木の管理が難しくなることもあります。

誰にも予測できないこと

樹木の種が風で飛んできて、石の隙間に根を張る。これは施工の良し悪しとは関係なく、環境的な要因です。特にこの区画のように緑地が隣にある場合、どうしても樹木が生えやすくなります。

誰にも予測できないことですし、誰が悪いわけでもありません。

ただ、結果として石が動いてしまった場合、それは据え付けられていない状態とほぼ変わりません。

墓誌が傾いていれば、地震や強風で倒れる恐れもあります。重い石が落ちれば、お参りに来られた方や、隣の墓所の方がけがをする危険もあります。

そうした可能性を感じたので、念のため霊園の事務所に連絡しておきました。

木の根が石を動かす――自然の力の強さ

こうして写真で見ると、木の根がどれほどの力を持っているかが分かります。

一見すると細い木の根ですが、年月をかけて石の隙間に入り込み、少しずつ石を押していきます。石塔は数百キロ、墓誌だって100キロ以上の重さがありますが、それでも根の力には抵抗できません。

以前、別の現場で見たお墓では、芝台(お墓の土台部分)が木の根によって横にスライドしていたこともありました。モルタルでしっかり据えられていたはずの石が、まるで何もなかったかのように動かされていたのです。

今回のケースも、おそらく数年かけて少しずつ変化していったのでしょう。

気づくことが、お墓を守る第一歩

お墓というのは、建てた時点で完成するものではありません。

建てたあとに、どれだけ気にかけられるかで姿が変わっていきます。

花を供えたり、水をかけたり、草を抜いたり。そんな何気ない手間の積み重ねが、石の表情を保たせるのだと思います。

特に緑地が近い環境では、樹木が生えやすく、気づかないうちに根が伸びていることもあります。

定期的にお墓を見に行くことで、「あ、ここに木が生えてきた」「目地に草が入り込んでいる」と早めに気づくことができます。

草木の根、雨水の侵入、基礎の沈下など――こうした変化は、どのお墓にも起こり得ることです。

お墓の手入れや点検は、見た目を整えるだけではありません。安全を守るためでもあるんです。

お墓に行けないときは?

それでも現実には、なかなかお墓に行けない方も多いと思います。

遠方に住んでいたり、体の都合があったり。

正直なことを言えば、私は「できるならご自身でお参りに来てほしい」と思っています。先祖を想う気持ちは、やはりご家族自身が足を運ぶことで伝わるものだと思うからです。

ただ、どうしても難しい場合もあるでしょう。そんなときは、石材店に清掃や点検を依頼するという方法もあります。

草を取り、目地の状態を確認する。樹木が生えていないか、石が動いていないかをチェックしてお伝えします。

お墓を守るというのは、気にかけ続けることなのかもしれません。

気づいたときが、始まりです

今日見かけたお墓も、建てた当時はきっとご家族の思いが詰まっていたはずです。

緑地が隣という環境の中で、年月の経過とともに草木が伸び、その姿が少し変わっていた。

けれど、また誰かが気づいて手をかけてあげれば、お墓は本来の姿を取り戻せます。

木の根は静かに、でも確実に石を動かしていきます。それを防ぐ唯一の方法は、「早めに気づくこと」です。

そして、たとえ抜本的に問題解決できなくとも、何かしらの手を打つことが大事。

しばらく足が遠のいてしまっていても大丈夫です。そこからまた向き合えば、お墓もきっと応えてくれます。

では。


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(有)吉澤石材店 吉澤光宏

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