こんにちは。川崎市多摩区の石屋、吉澤石材店の吉澤です。
いま施工中の現場は、
寺院墓地での二軒並びの外柵工事です。
※工事の流れは、前回の記事にまとめています
→ 「川崎市多摩区の寺院墓地で新規墓所工事⑤」
この工事は、その後も続けて進めてきました。
羽目石から芝台、縁石まで進め、
雨で2日止まりましたが、
今日は石塔二基と墓誌、塔婆立まで据え付け。
残りは金具と清掃だけです。
ほぼ完成が近くなりました。

外柵工事は「手が入らない合口」が出ることも
三方を囲まれている二軒並びの外柵、
羽目石をどこから据えていくか。
そこを最初に考えてから手を付けないと、
あとで詰みます。
構造上、
「すき間が狭くて手が入らない」部分が
必ず出るからです。

ギリギリでも手が入れば、
事前にマスキングして対応も考えられます。
しかし、すき間が2センチ少しはさすがに厳しい。
手が入らないということは、
仕上げの化粧目地が打てない。
そのままでは合口から雨水が入ってしまいます。
できないから放置となれば、
あとあとが心配になります。
なので羽目石の据え付けの段階で、
合口に対して先に手を打ちました。
目地が打てない合口は、先に水対策
狙いはシンプルです。
「これ以上、水が奥へ行かない状態」を、
最初から作ってしまう。
合口の内側寄り。そしてはみ出ない位置。
そこに、弾性接着剤を線状に置きます。
その上に石が据わると、
接着剤がつぶれて帯になります。
雨水が合口に入っても、そこで止まる。
奥へ回りにくい。
そういう狙いで据え付けました。

接着剤を多めに入れる理由
うちでは、弾性接着剤は多めに入れるのが基本です。
理由は二つ。
まず、接着剤を多めに入れると、
つぶれることで接着面積が大幅に増えます。
仮に水が入っても、点や細い線でつながるより
面で接着されている方が間違いなく強い。
それと、もう一つ。
接着剤は年月で少しずつ傷んでいきます。
これは化学物質である以上は避けられません。
ただ、傷みは周囲から進むことが多い。
最初の量が多ければ、その分だけ“残り”がある。
結果として、長い期間、石を接着していられる。
見えない場所ですが、こういうところで差が出ます。

石塔は接着剤を併用
今日据え付けた石塔も、同じ考え方です。
ブチル系と変成シリコン系の接着剤を併用して、
それぞれの強みを発揮できる形にしています。
量も、かなり多めです。
長く持たせる仕事だから。
何十年後も、石がしっかり据わっているように。
そのための一手として、そうしています。
今回の塔婆立は「はまり」+接着剤
塔婆立も同じです。
うちは普段、塔婆立は羽目石に
組み込む形にしています。
そのほうが、
納まりも強度も取りやすいからです。
ただ今回は、奥行きが長い現場なので、
塔婆立は羽目石組み込みではなく、
単独にしました。
その補強という意味で、
敷石にはまり込む形に。
さらに、後ろの羽目石とも接着してあります。
一本を接着剤だけで支えるのではなく、
構造と接着剤の両方によって持たせる。
まず簡単には傷まない作りです。