年の瀬に思い出す──五流尊瀧院・石造宝塔

2025年12月22日(月)


こんにちは。川崎市多摩区の石屋、吉澤石材店の吉澤です。

今年も、もう少しで終わりですね。
年の瀬のあわただしさもあるのでしょうか。

急に「また訪れたい場所」が
頭に浮かんできてしまいました。

目で見るだけではなく、
その場の空気ごと味わいたい場所。
ついつい、また会いたい石造物のことを
考えてしまいます。

もしかしたら、少しだけ現実逃避なのかも
しれません。

2020年に訪れた、岡山県の五流尊瀧院の
石造宝塔はそうした石造物のひとつです。

ここは修験道の総本山として知られる寺院です。
ただ、あの宝塔は「境内の奥」というより、
熊野神社の近くに立っている印象が強い。

もともとは、両者は隣り合う場所にあったと
伝えられているそうです。

五流尊瀧院と熊野神社は、
明治の神仏分離政策によって分かれました。

今も三重塔や鐘楼は熊野神社側に接して建つ。
また、宝塔もその近くに建っています。

安定感を感じさせる、
壇上積基壇の上に建つ姿は、ただ美しい。

伝えられるところでは、仁治元年(1240)、
後鳥羽上皇の供養のために造立された宝塔。

応仁の乱の戦火でこの地が焼き討ちにあい、
石の表面は傷んだともいいます。
塔身や基礎(台の石)には、その傷跡が残っている。

でもそれが、古い石造物の弱さではなく、
私には、時間を越えてきた強さに見えました。

笠の下、軒端の四隅には小孔があいていましたが、
これは風鐸などを掛けるためのものだそうです。

昔は、風が吹くたびに、
どのような音色を響かせていたのでしょうか。

来年も、こういう石造物たちに会いに行きたい。
そして、もし機会に恵まれるなら、
こうした美しい宝塔を自分の手で建ててみたい。

ただ形を真似るのではなく、その石造物に込められた
人々の思いに心をはせ、それを活かしてみたい。

そのために、私はこうした古の石塔たちを、
数多く見て歩いています。

見るだけではなく、空気ごと味わい、
手を合わせ、細部に目を凝らす。

そういう積み重ねが、いつか仕事として
形になる日が来ることを祈りたいです。

では。

※最後までご覧をいただきまして、ありがとうございます。

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(有)吉澤石材店 吉澤光宏

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