目地補修の相談から──目地だけで済ませるか、据え直すか
2025年12月21日(日)
こんにちは。川崎市多摩区の石屋、吉澤石材店の吉澤です。
今日、こんなご相談がありました。
「外柵の目地が痩せてきた。最近地震も多いので
心配。定期的に手を入れたほうがいいのか」

目安を先に言うと、こうです。
見た目を整えるだけなら、まずは目地の補修。
地震の心配まで減らしたいなら、
石塔の据え直しも選択肢になります。
どちらが正しい、ではなく、
どこまで手を入れるかの話です。
よくあるご相談です。
目地は“見た目”の話と“安全性”の話が
混ざりやすいので、順番に整理します。
目地は「化粧」。でも、安全性は「据え付け」で決まる
目地が痩せたり、割れたり、剥がれたりする。
これは外柵でも石塔でも起きます。
昔の施工では、どちらもセメント目地が中心
でしたから、年数が経てばそうなるのは
自然なことです。
ただ、ここで大事なのは、目地の役割です。
目地は、見た目を整え、
隙間を埋めるための「化粧」。
目地そのもので、お墓全体の強度を
作っているのではありません。
安全性を左右するのは、
石同士がどう据え付けられているかです。
昔は、石の据え付けもモルタルなどのセメント系
が中心でした。
今は、墓石用の接着剤(いわゆるコーキング)で
石同士を接着する工法が標準です。
正しく施工すれば、石同士が動きにくくなります。
そしてその上で、化粧目地も接着剤で丁寧に
仕上げておけば、目地自体も傷みにくくなります。
ただし、化粧目地だけをやり直しても、
据え付けが古いままなら効果は限定的。
ここは誤解されやすいので、先に書いておきます。
目地の補修だけで済ませるのか。
それとも、石塔を一度外して据え直し、
接着剤で一体化して心配を減らすのか。
私としては後者が、心配を減らす効果が大きい
手当てだと思っています。
ただ、そこまでやるかどうかは、施主さんの
ご予算とお気持ちで決めていただければいい話です。
強い揺れで、最初に動きやすいのは棹石です
古い据え方のお墓の中には、
石を「重ねてあるだけ」に近いものがあります。
ただ、それは手抜きではありません。
当時の標準的な施工は、そういうやり方だったということです。
ただ、強い地震が来たとき、いちばん背が高く
細い棹石(○○家之墓と刻んである石)が、
ずれたり外れたりしやすい。
これは構造上、どうしてもそうなります。
だから、棹石・上台・中台・芝台を、
それぞれ接着剤で一体化して据え直す。
これを行うと、揺れで動く心配は大きく減らせます。
もちろん、
「絶対」を約束できる話ではありません。
巨大地震なら、芝台と納骨室の継ぎ目など、
別の弱点で動く可能性は残ります。
けれど、起きやすい壊れ方を「減らす」
手当てはできます。
私はそこを現実的に狙うべきだと思っています。
外柵は“据え直し”が現実的ではないことが多い
ここで、外柵と石塔の話を分けます。
と言っても、目地が割れる/剥がれるという
現象が違うわけではありません。
違うのは、できる手当ての現実性です。
古めの外柵は、正面は石でも、側面や背面が
コンクリートで作られていることが
少なくありません。
もともとモルタル施工を前提にした
構成なので、今の接着剤工法へと
切り替えるのには向きません。
外柵を全部ばらして据え直すとなれば、
費用も工期も大きくなります。
現場条件によっては機械が入らず、
現実的でないケースもあります。
だから外柵は、まず目地をやり直して、
現状の収まりを整える──
そこが現実的な手当てになります。
石塔は、接着剤施工へ切り替えやすい
一方で石塔は、外柵に比べると取り外しと
据え直しがしやすい部分です。
石同士の合わせ目を清掃し、接着剤で一体化して
据え直す。
古いお墓でも、ここは「心配を減らす」手が
入りやすいところです。

ベストが難しいなら、セカンドベストを選ぶ
「全部やり直し」か「何もしない」か。
お墓の補修は二択ではありません。
費用も、構造の限界もある。だからこそ、
その間にある「現実的に効く手当て」を選ぶ。
目地が気になったとき、見た目を整えるだけで
済ますのか。
あるいは、もう一歩踏み込んで、
安全性まで含めて心配を減らすのか。
それは、お墓の状態と現場条件で変わります。
今日のご相談も、まず現場を見て、
できる範囲で最善を一緒に考えていきます。
では。
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