手を合わせる場所をつくること。家族と選ぶお墓という形

2025年11月14日(金)


こんにちは。川崎市多摩区の石屋、吉澤石材店の吉澤です。

先日、Yahoo!ニュースで「墓じまいが10年で2倍に増えた」という記事を読みました。
その中で、江戸時代から270年続いたお墓を墓じまいされたという女性が、こう話していました。

「昔はお墓にはよく両親や祖父母と行っていました。すごく身近な場所だったので、
それがなくなることは両親や祖父母との思い出の場所がなくなっていくという意味でも、
とてもさみしいものはありました」

守りたかったけれど、守れなかった。
その「さみしい」という言葉が、心に残りました。

記事では、海洋散骨や樹木葬、メタバース霊園など、新しい供養の形も紹介されていました。
選択肢が広がること自体は、悪いことではありません。
ただ、供養の形だけに注目すると、「そこにある想い」が見えにくくなってしまう気がしています。

自分と家族の想いは、同じ方向を向いているか

供養に正解はありません。
お墓を建てることも、散骨や樹木葬を選ぶことも、それぞれに理由があります。

ただ、ひとつ大切なのは、
自分の想いと、家族の想いが重なっているかどうかということ。

その記事のコメント欄には、こんな声がありました。

「死んだ後のことなんてどうでもいいから散骨がいい」
「子孫に負担をかけたくないからお墓はいらない。納骨堂は絶対に嫌だと伝えてある」

その気持ちはわかります。
でも、少しだけ立ち止まってみてもよいのではないでしょうか。

散骨を選んだ場合、残された人が手を合わせたいときに
どこに向かえばいいのか。
海はあまりにも広く、場所は残りません。

配慮のつもりが、知らず知らずのうちに「自分の希望の方が強くなっている」こともあります。

北海道からのご相談

以前、北海道の方からご相談をいただきました。
墓じまいの工事を見守る中で、涙が止まらなくなってしまったそうです。

「せめて石の一部だけでも手元に残せないか」

廃材となる石で、ペーパーウェイトを作る依頼でした。

手間のかかる仕事ですし、価格もつけにくい内容です。
それでも、その方が確かに「守りたかった」と感じた想いは、まっすぐなものでした。
その重さを受け取り、引き受けました。

形がなくなることの寂しさは、単に石がなくなるという話ではありません。
そこに寄せてきた時間や記憶とのつながりが、ふっと手から離れることでもあります。

立ち止まって向き合うということ

私が石屋の仕事に携わって、もうじき40年になります。
その間、お墓を建てる方もいれば、
片付ける方もいました。

中には今のお墓を片付けて、樹木葬や海洋散骨を選ばれた方もいます。

どれも、その家族なりの事情と想いがあり、
その家族なりの答えです。

ただ、自分だけの考えで決めてしまうのではなく、
残される側の気持ちにも、ほんの少し目を向けてみてほしいと思います。

自分はどうしたいのか。
家族はどう受け止めるのか。
さらには親族はどう感じるのか。
  (追記)墓じまいの場合は、親族への説明や合意が必要になることも少なくありません。
その想いが、どこかで重なっているかどうか。

手を合わせる場所があるということは、
思い出に触れられる時間を、これから先も持てるということでもあります。

お墓は、ただ石がある場所ではありません。
思い出したいとき、迷ったとき、誰かに支えが欲しいときに、
「訪れる場所がある」ということ。

それは、これから先の時間の中で、静かに効いてくるものです。

記事の女性の「さみしい」という言葉。
北海道の方の涙。
そこには、言葉だけでは語りきれない想いがあふれているはずです。

向き合うことは簡単ではありません。
でも、向き合って選んだ形なら、どんな供養であっても、
それはその家族にとっての正解だと、私は思います。

では。


※参考:
東海テレビ「海洋散骨から“メタバース霊園”まで…10年で2倍に急増中の『墓じまい』」
(2025年11月6日配信・Yahoo!ニュース掲載)
https://news.yahoo.co.jp/articles/043039f9588e0aee867748c98b47a6f8a6189cc2

※最後までご覧をいただきまして、ありがとうございます。

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(有)吉澤石材店 吉澤光宏

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