「お墓の力と役割について(前編)――変わる時代と、遠ざかる心
2025年10月25日(土)
こんにちは。川崎市多摩区の石屋、吉澤石材店の吉澤です。

今回は、2018年にデジタル雑誌『ENDMAG』(現在は廃刊)に寄稿した文章をもとに、「お墓の力」について改めて考えてみたいと思います。執筆から少し時間が経ちましたが、記事の本質的な部分は今も変わらないと考え、当時のままの形でお届けします。
ぜひご覧ください。
はじめに
はじめまして。川崎市の片隅で小さな石材店を営む、吉澤光宏と申します。主にお墓を建てることを生業に、地域の人々に支えていただきながら、仕事をしてまいりました。大学を出てから二年の修行を経て、父の営む石材店に入社し、30年ほどになります。
その間、多くのお客様とのありがたい出会いがありました。今回ご縁があり、お墓に関して自分で経験したことや思ったことなどを「現場レベルで感じる話」として、書き記してみたいと思います。
1.お墓や葬送を巡る意識変化と体感
エンディングに関する報道などで既にご承知の方も多いと思いますが、ここ数年で、お墓をはじめ葬送に対する人々の見方は、どんどん変化してきています。ゼロ葬や直葬などといった、従来からは考えられなかったような故人の見送り方も、言葉として認知され既に数年も経っています。
お墓も新しい形式の選択肢が増え、中には、お墓そのものも不要ではないかという声も聞かれます。業界の片隅にいる者としては、言葉にしがたい思いがしないわけではありません。ですが、人々のお墓に対する意識が変わってきているのは、もはや間違いないと事実と思います。
その反面、世の中に溢れるそれらの情報に対し、「本当に鵜呑みに出来るのか?」といった気持ちも実はあります。私が日頃関わる人たちの多くは、「お墓を作りたい」、「お墓を建てることができてこれで安心できた」と言ってくださいます。
石屋に来る人たちですから、当たり前だろうと言われれば、それまでかもしれません。ですが、「お墓の魅力やお墓の持つ本来の力」について、気付いていない人たちも、実はかなりの数いらっしゃるのでは?そんなふうにも思うのです。
今の流れを頭から否定するのではなく、まずはお墓に対してフラットな視線から判断していただけるようにしたい。そのためにも、お墓(の良さ)を少しでも多くの人たちに知ってもらえたら。町の石屋として、私にはそんな願いがあります。

2.昔からのお墓に対する意識と変わる家族構成
昔からお墓は、亡くなった先祖を弔う場として、また家そのものを表す場として大切にされてきました。人は大家族の一員として、幼いころから葬送や先祖祭祀に関わる経験を、日常の中で、ごく自然に経験する時代がありました。親族との死別や、祖父母に手を引かれてのお墓参りなどが、その一例です。
そうした経験を通じ、亡き人を大切に敬う気持ちが育まれ、自らのルーツを感じながら成長していったのだろうと推察します。ところが、時代を経て現代に至る中で、当然のことながら社会環境は変化しました。かつての大家族は核家族化し、家族構成も変わりました。
それは必然的に、世代間を超えて繋いできた多くのことが途絶え、あるいは忘れ去られるということでもあります。そうした意味では、今の我々は一、二世代前の人たちに比べて、先祖祭祀に関する『知識や経験』が絶対的に不足していると言っていいのかもしれません。

3.知らないがゆえ、親しみようがない
「知識や経験不足」は、機会の減少が招いた結果ですが、こうしたことは後々に大きな影響を及ぼすようです。なぜお墓を建てないといけないのか。なぜ先祖とはいえ、見知らずの人と同じお墓に入らなければならないのか。こうした思いを持つ人たちも、実際にいらっしゃいます。
また、超高齢社会の到来と人口の減少は、先行き不透明な経済情勢と共に、何とも言えぬ不安感を社会に与えているように感じます。こうした時代背景も、人々のお墓に対する思いを変化させる要因の一つになっていると思います。避けがたい理由と意識変化が相まって、お墓を取り巻く環境は、今まさに逆風の中にあります。
🪶つづく
こうして見ると、私たちが“お墓を遠く感じてしまう理由”には、時代の流れだけでなく、知らないがゆえの誤解も少なくないように思います。
次回は、情報があふれる今の時代に、改めて「お墓とは何か」を考えてみたいと思います。
では。
後編はこちら → お墓の力と役割について(後編) ※後編のアップ後にリンクします
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