お墓の施工品質は解体であらわになる ― 石屋としての矜持

2025年10月23日(木)


こんにちは。川崎市多摩区の石屋、吉澤石材店の吉澤です。

朝晩の冷え込みが少しずつ増してきましたね。現場作業をしていても日が暮れるのがすっかり早くなり、秋の深まりを感じます。

昨日は「お墓参りの際の安全」について少し書きましたが、今日はお墓をつくる側として、ある現場で感じたことをお話しします。

作業中に思わず“ん?”

少し前のことになりますが、解体工事を行いました。カニクレーン(小型の現場用クレーン)が入らない区画ということもあり、作業は難航するだろうと見ていました。

ところが、取り掛かってみると予想以上にはかどる。石塔の取り外しまで順調に進み、想定よりずっと早い時間に戻ることができました。

「ああ、早く終わってよかった」と思ったその瞬間、ふと考えました。――想定より早いということは、どういうことだろう、と。

解体の見積もりでは、施工状況を推測しながら手間を見積もります。「この造りなら、このくらいの時間はかかるだろう」と考えておく。裏を返せば、それだけの強度や工夫がなされているはずだろうと予測するからです。

それはつまり、この場面ではそれ相応の外し手間がかかるであろう施工方法が採られているはず、ということでもあります。

解体であらわになった施工品質

ところが実際に外してみると、思ったより簡単に外れてしまった。

時に偶然に助けられる場合もありますが、今回のケースは明らかに違いました。自社で建てたお墓なら、どういう施工をしたか把握しています。しかし他社施工のお墓は、開けてみるまで本当にわかりません。

今回は正直、「ああ、こういう作りだったんだな」という現場。施工上、ちょっと残念な状態でした。

解体の際に外した石塔の一部。内部には接着剤なし。目地をしただけの造りでした。

外した石の底面を見ると、接着の跡はまったくありません。ただ石を重ねて目地をしているだけの状態でした。本来なら、接着剤を要所に多く配し、しっかりと接着しておかねばならない部分なのに。

これでは地震や経年変化の際に動いてしまうおそれがあります。

解体するには楽でよかった。でもこのお墓だって、本当は長い年月そこに建ち続けるはずだったわけです。

石を置いて接着剤で目地をしただけなんて、普通なら絶対ありえません。複雑な思いになりました。

もちろん、すべての現場で完璧な施工を求めるのは難しい。

場所、施工時の季節や天気、お墓の形――たとえ同じ墓地内でも、現場の状況は一つ一つのお墓ですべて違ってきます。どんな石屋であっても、常に100点満点というのは至難の業でしょう。

見えないところも、手を抜かない

それでも、見えない部分をどこまで丁寧に仕上げるか。そこに石屋の誠実さが現れます。しっかり施工しようとして、結果的により良くできなかったケースと、最初から楽をして省略した仕上げのケース。

そうしたことは、石屋の目で見れば一発で判断できるものです。

お墓は長い年月、風雨にさらされながらそこに建ち続けます。だからこそ、外から見えない部分こそ大切にしなければなりません。

私は誰かの仕事を批判するより、自分はどうあるべきかを考えたい。プロだからこそ、合格点(それが何点なのかはともかく)を超える施工を目指す。そんな思いがあります。

自分の手で建てたお墓が、いつか解体されるその時――「こんなにしっかりやってあったのか」と思われるような、恥ずかしくないだけの仕事をしていきたいと改めて思います。

それが、石屋としての私の矜持です。

これからお墓を建てる方には、安心して任せられる石屋を選んでいただきたい。その判断材料の一つとして、こうした“見えない部分”への姿勢が大切だということを、覚えておいてほしいと思います。

では。

※最後までご覧をいただきまして、ありがとうございます。
お墓以外にも石鳥居や記念碑のお仕事も承っております

似顔絵(有)吉澤石材店 吉澤光宏

ご相談・お問合せは、お気軽にどうぞ。
電話 044-911-2552 (携帯転送なので外出先でもつながります)
メール お問い合わせフォーム

トップページはこちら
お問い合わせフォームはこちら