家紋を確かめるということ──受け継がれた印を、正しく伝えるために
2025年10月15日(水)
こんにちは。川崎市多摩区の吉澤石材店、吉澤です。
以前、お客様と家紋の確認で少し迷ったことがありました。その時のことを書いてみたいと思います。
大切な家紋の確認
お墓を建てるとき、家紋の確認も大切な工程のひとつです。家紋は、その家の歴史や思いを象徴するもの。
代々受け継がれてきた「印」だからこそ、石に刻むときには間違いのない形で遺していきたい。
『丸に三つ雁金』を見極める
あるお宅の石塔を建てさせていただいた際、家紋の確認で少し判断に迷う場面がありました。お施主様から「うちは雁金の紋なんだよ」と伺い、「丸の中に三羽の雁金がいる」とのこと。
打合せに持参した紋帳を開くと、その本には「丸に三つ雁金」は載っておらず、「中輪に嘴合わせ三つ雁金」が最も近い形でした。ここで大事なのは、紋帳に載っていないからといって、すぐに「似ている別の紋」で代用してはいけないということです。(※紋帳に載っていないこと自体は珍しいことではありません)
お施主様が言われた「丸」という言葉を信じて、もう少し調べてみることにしまして…帰社後に別の紋帳を確認すると、そこには「丸に三つ雁金」という家紋が載っていました。
一般的には「中輪」より「丸」のほうがよく見られる形です。このときはお客様にも再確認し、最終的にはこの「丸に三つ雁金」が正しい家紋だと判明しました。
デザインされた雁(かり)は、どこか愛嬌のある表情をしています。雁金紋の種類は本当に多彩で、古くから用いられてきた家紋のひとつです。
そういえば、以前どこかで「雁は遠く離れた人を思う象徴として和歌にも詠まれてきた」と読んだことがあります。なるほどと思いました。そうした背景からか、雁金紋を「つながり」や「絆」の象徴として語る人も少なくないそうですね。
家紋とは、単なる模様ではなく、代々の祈りや願いを映した「家のしるし」なのだと感じます。
推察するということ
家紋は、その家の誇りであり、祖先の思いを受け継ぐ大切な印。少しの違いにも、何らかの理由があるはずです。
だからこそ私たちは、言われたとおりに彫るだけではなく、もう一歩踏み込んで確かめます。石に刻むということは、百年、二百年と形に残るということ。つまり、今はまだ生まれていない子孫たちも目にするものです。
たとえ小さな家紋でも、そこに込められた先祖の思いを正しく伝えるお手伝いをしたい。お施主様の言葉を尊重しながらも、「本当にこれで正しいか」と確認を重ねる。こうした「推察する作業」は、石屋の大切な役割のひとつだと思います。
雁金紋の多様性
雁金紋を見ていくと、一羽のものから五羽のもの、羽をねじったような表現までさまざま。顔の角度や嘴の向きが少し違うだけで印象は大きく変わり、見ていて飽きません。
無数のバリエーションがあるからこそ、確認作業には慎重さが求められます。
雁金紋に限らず、家紋は本当に多種多様です。丸があったりなかったり、その丸も糸輪・細輪・中輪、さらには太輪があったりする。理由をたどっていくと、まさに「沼」のような世界です(笑)。
もしご自宅の家紋について詳しく知りたい方がいらっしゃれば、お気軽にご相談ください。一緒に確認させていただきます。
正しい紋を、子孫へ
家紋を見つめることは、一族の縦糸(絆)を意識することでもあります。
せっかく昔から伝わってきたのだから、正しい紋をしっかりと子孫に伝えていきたいものですね。それは、今を生きる私たちの責務でもあると思います。
そして、その責務を果たすお手伝いをするのが、石屋としての私たちの仕事です。
お墓をつくることは、「家の歴史を次へ渡す仕事」。それはお客様にとっても、私たちにとっても同じことです。
その思いを共有しながら、これからも一件一件の仕事に丁寧に取り組んでいきたいと思います。
では。
※最後までご覧をいただきまして、ありがとうございます。
現地確認。お見積り・ご提案はすべて無料です。
(有)吉澤石材店 吉澤光宏
ご相談・お問合せは、お気軽にどうぞ。
電話 044-911-2552 (携帯転送なので外出先でもつながります)
メール お問い合わせフォーム