実録・墓じまいの現場──解体作業と費用の背景
2025年10月4日(土)
こんにちは。川崎市多摩区の石屋、吉澤石材店の吉澤です。
今日は、実際に行った墓じまいの現場をご紹介します。お墓の解体というと、どこか抽象的に捉えられがちですが、実際にはこれだけの作業と手間がかかるものなのだということを、写真とともにお伝えできればと思います。

解体前の墓所
今回手がけたのは、間口1.5m×奥行1.8mの区画に、8寸角の石塔が据えられた墓所でした。外柵には大谷石が用いられています。正確な建立年が刻まれていないためわかりませんが、施工の様子や石材の風化具合から見て、半世紀以上の年月を経たお墓と推察します。ご家族にとっては、長年にわたって手を合わせてきた場所であったことでしょう。
今回のケースでは、代を重ねる中で当初の家からは縁が遠くなっており、今後の維持管理が難しいことが予想されていたそうです。このままにすれば、やがて無縁となって荒れてしまう可能性もある。その前にお骨を永代墓へと移して、安心できる形でつなぎたい――そうした判断から墓じまいを選ばれたのです。
解体作業の実際
解体にあたり、まず石塔をひとつずつ外していきます。頭頂部に笠と剣が付いた独特の形、そして棹石、上台、中台。8寸角とはいえ、御影石。一つ一つが重く、カニクレーンを使って慎重に取り外していく必要があります。半世紀以上の時を経た石塔は、経年による日焼けなど見られるものの、まだまだしっかりとしています。
外柵の大谷石は凝灰岩で柔らかい石材のため、長年の風雨にさらされて表面の風化や欠けも目立ちますが、それでも半世紀以上にわたって石塔を支え、お骨を守り続けてきました。性質上、劣化は避けられませんが、その役目は十分に果たしてくれたと言えるでしょう。
親柱や敷石を一つずつ外し、トラックへと積み込んでいきます。
パレットの上に並んだ石材を見ると、その量の多さに驚かれる方も多いでしょう。これらは人力で動かせるものは手で運び、重いものはカニクレーンなどの重機を使って運び出します。今回は大谷石の撤去にもカニクレーンを使いました。一つ一つは重く、存在感がありますが、もはやお墓としての役目を終えた”残材”です。

取り外した役目を終えた石 その1(上台・中台・棹石・芝台と大谷石外柵)

取り外した役目を終えた石 その2(水鉢・香立てほか)
そして、石材だけではありません。埋め土や、大谷石外柵を据え付けてあったモルタルの残骸なども大量に出てきます。これらも適切に処分しなければなりません。

トラックに残土と据付けモルタル残材を積み込む
役目を終えた石たちの行方
作業を終えた区画は、すっきりと更地になりました。石塔も外柵もなくなった姿には一抹の寂しさもありますが、ご家族の選択によって新しい供養の形へと橋渡しされました。ここからは永代墓がその思いを受け止め、無縁になる心配なく守り続けてくれるはずです。

更地になった墓所
役目を果たしきった石塔は、細かく割って処分になります。堅牢な石材だからこそ、破砕にも手間がかかります。パレットの上に並んだ石材、トラックに積み込まれた残材――これらすべてを見ると、お墓の解体がどれだけの作業を伴うものか、実感していただけるのではないでしょうか。

役目を終えた石を、細かく砕いて処分へ
解体費用について
「墓じまいにそんなに費用がかかるのか」と驚かれる方も少なくありません。ですが実際の現場では、人力だけでどうにかなるものではないのです。人件費に加えて、重機の使用料、廃材の搬出費、そして破砕・処分費――こうしたものが積み重なっていきます。
お墓はどれも、その時代の技術でしっかりと据えられています。そのため、年月を経て想定より早く解体できる場合もあれば、逆に時間がかかるものもあります。いずれにしても、いざ解体となればその堅牢さゆえに手間がかかり、処分まで含めるとどうしても相応の費用になるものです。
墓じまいについて思うこと
半世紀以上にわたって想いをつないできたお墓。墓じまいは「終わり」ではなく、「次の供養の形への移行」なのだと私は考えています。その役目を終えた石を片付けるのも石屋の仕事ですが、ご家族の新しい供養の形へと、確かに橋渡しができたと感じています。
「墓じまい」という言葉がひんぱんに聞かれるようになって、もうずいぶん経ちます。今回のように承継者が縁遠くなって管理が難しい事情もあれば、後継ぎがいるのに墓じまいを選ぶケースもあります。
それぞれに事情があることは承知しています。それが避けられないものなのか、そうでないのかは、私には分かりません。ただ石屋として、できることならお墓は残していただきたいというのが正直な思いです。
だからこそ、家族や親族の間でよく話し合い、みなが納得したうえで判断することが大切です。一人で決めてしまうと、後から「親の墓参りくらいしたかった」「うちの先祖でもあるのに」といった気まずい思いをすることもあります。周囲の風潮に流されることなく、関係者みなが納得のいく判断をしていただきたいと思います。
では。
あわせて、過去に書いた記事もご覧いただければと思います。
・『子どもが独身でも安心。元気なうちに考える「お墓じまい」』(2025年8月14日)
・『その墓じまい、本当に今でいいの?──流されない墓じまいのすすめ』(2025年8月25日)
※最後までご覧をいただきまして、ありがとうございます。
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(有)吉澤石材店 吉澤光宏
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