張り石現場から見る「接着剤の選び方」

2025年9月24日(水)


こんにちは。川崎市多摩区の石屋、吉澤石材店の吉澤です。

今、施工中の現場では、普段はメインで使わないエポキシ系接着剤、いわゆるセラミックボンドを中心に施工しています。なぜ普段使わないものをあえて選んだのか。今日はその理由と、当店での接着剤の考え方について書いてみます。

エポキシ系接着剤を裏面に団子状に置いたところ。撹拌は念入りに。

薄い石をコンクリートへ貼る「張り石」工事

今回の工事は、いわゆる張り石。つまり、コンクリートの壁面に薄い石材を貼り付けていく工事です。昔は生セメントを団子状にして張る「団子張り」が一般的でしたが、現在ではエポキシ系の接着剤を使うのが主流になっています。

薄い石材では、穴を開けて金具で引っ掛ける方法は現実的ではありませんし、セメント系ではどうしても接着力が不足しがちです。そんなときに強力な接着力を発揮するのがこのエポキシ系接着剤。今回の現場でも、この特性を生かすために採用しました。

クサビで位置を決め、エポキシ系接着剤で一枚ずつ貼り付けていきます。

セラミックボンドの特性

エポキシ系接着剤は、二液を混合することで強力に硬化するタイプです。硬化スピードは比較的早めで次の工程へもスムーズに移れるだけではなく、作業時間も十分に確保できるため、慌てることなく丁寧に施工できます。

こうした特性から、作業効率が求められる現場ではとても便利な材料です。接着力は非常に強いため、近年はお墓の施工に使用している業者さんも多いと認識しています。

ただし、メリットばかりではありません。混合が不十分だと未硬化の成分が石に染み込み、シミや変色の原因になることがあります。撹拌は確実に、丁寧に行わなければなりません。

当店での使い分け

実は当店では、エポキシ系接着剤は重さを受ける部材や、今回のような張り石工事などに限定して使っています。逆に、お墓の工事などで、石と石をつなぐ主要な部分では、エポキシ系ではなく、適度な弾性を持つ変成シリコン系接着剤を選んでいます。

石同士の接着に使わない理由

エポキシ系は非常に硬く固まるのが特徴です。一部には多少の弾性を残すタイプもありますが、基本的にはカチカチに硬化します。それは一見良いことですが、大きな衝撃が加わったとき、力を吸収できず石そのものを剥がしたり、割ったりしてしまうことがあるのです。
私自身、地震の被災地を訪れたときに、そうした破損例を目にしてきました。接着が強すぎるがゆえに、規格外の衝撃に襲われてお墓の構造全体がバラバラになってしまった光景を見たときには言葉を失いました。

お墓は長く使い続けるものでもあります。地震や経年変化にもしなやかに耐えてほしい。そう考えて、石同士の接着では弾性のある変成シリコン系接着剤や、粘着力の高いブチル系接着剤を適切な箇所に、適切な量を使う方法を選んでいます。

材料と工法には適材適所がある

大切なのは、材料の特性を理解して、現場の条件に合わせて最も適した方法を選ぶことです。

石同士の接着では柔軟性や粘着性を重視し、躯体への張り石では接着力を重視する。こうした使い分けこそが、長い年月にわたり、安心してお参りいただけるお墓づくりにつながると信じています。

速さや作業性を優先すれば、もっと効率よく現場をこなすこともできるかもしれません。ですがお墓は一度建てたら何十年、何世代もそこにあり続けるもの。だからこそ、当店ではあえて長持ちを優先し、見えない部分にも手間を惜しまず丁寧にお墓を作っていきます。

接着剤ひとつの選び方にも、そんな思いを込め施工しているんです。

目地施工前の据付け完了状態。明日、仕上げ作業に入ります。

さてこの現場、明日は目地を変成シリコン系接着剤を使用して仕上げる予定です。粗面用マスキングテープでしっかり養生し、まっすぐきれいな目地になるよう丁寧に打ち込んでいきます。

では。

※最後までご覧をいただきまして、ありがとうございます。
お墓以外にも石鳥居や記念碑のお仕事も承っております

似顔絵(有)吉澤石材店 吉澤光宏

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