建墓後15年、お墓に生じたクラック――登戸の石屋・吉澤石材店はこう対応した

2025年8月18日(月)


こんにちは。川崎市多摩区の石屋、吉澤石材店の吉澤です。

お墓を建ててから年月が経つと、「石にクラック(ひび割れ)が入ることはあるのか」と心配になる方もいらっしゃるかもしれません。実は数年前、建立から15年ほど経った棹石に大きなクラックが入ってしまった事例に立ち会ったことがあります。今回はその時のことを、少し書いてみたいと思います。

会社のホームぺージのブログなので、けっこう良いことばかり書いているように思われるかもしれませんが、時にはこんなことがあったりするんですね。


  • 15年経って気づいた大きなクラック

下の画像、ちょっと見にくいかもしれませんがご覧ください。建立して15年くらい経過した石塔の棹石にクラックが!

しかも小さく隅の方が、というわけではありません。かなり大きく行ってみれば袈裟懸けのように…。

数年前に納骨で訪れた際、掃除をしていてふと石塔を見上げた時に「あれっ?」。気が付いてしまいました。もちろん、建立時にはまったくわからなかったものです。

入荷時の検品、そして文字彫刻の段階でも気が付かず。幾度も目にしていながら見落としてしまっていたのでしょうか?


  • なぜこんなことが起きるのか

この石塔を加工したのは日本国内の工場です。もし加工段階でわかっていれば、決してこのような製品を卸すわけがありません。なぜなら、あと必ずトラブルになるからです。なので、加工段階でもわからなかったと考えるほうが妥当だと考えます。

それにしても、こんなことって実際に起こり得るのでしょうか?

残念ながら「絶対にありえない」とは言えません。なぜなら石は自然の産物だからです。見た目にはわからなくても、石の中に潜んでいた微細なキズ・弱い部分が年月の経過とともに表に現れ、だんだんと大きくなって露わになることもあるのです。

ただ実際には、仕上げたお墓でこうなってしまう確率は決して高くないはずなんです。原石を切削し、研磨していく過程でほとんどのキズは水の染み込み具合などで明らかになります。なので「確率が高くない」と言えるんです。

それでも、何重もの確認を潜り抜けてしまうことはどうしてもあります。


  • 保証期間は過ぎてはいたが

これだけ大きなキズ。さすがにお施主さんに黙っているわけにはいきません。お詫びして斜めに大きくキズが出てきてしまったことを正直にお伝えをしました。

するとやはりお施主さんも気が付いていたそうで…「キズがあるけどどうしたものかな…」と思っていらしたとのこと。正直なところ、とても言いづらかったのですが、その言葉を伺って「お伝えしておいてよかった」と心から思いました。

施工後15年を経過し、弊社の瑕疵保証の期間(10年)は過ぎています。しかし、お墓の顔になる棹石正面にこれほどの瑕疵を生じては…。弊社で施工したお墓ではあってはならないことだと判断しました。

石材を卸してくれた問屋さんにも相談し、ありがたいことに快く交換に応じてくれることに。そして石の取り外しと文字彫刻代金は弊社負担として、お施主さんにご説明、交換をお願いして了解をいただきました。

あとは実際の施工です。

接着剤を充分に使って施工をしたお墓です。ゆえに取り外しにもかなり手間がかかります。

無事に取外し完了。

石に残った接着剤の表面(上下の写真)をよく見てもらえますか?

いずれも表面がつるっとしておらず、ザラザラとした感じなのがわかると思います。なにが言いたいか——つまり接着剤がよく効いていたという事なんです。だから石と接着剤との継ぎ目で剥がれずに、接着剤そのものが破断しているからこそこのような表面になるのです。

つまり15年前(数年前の時点で)の施工ですが、目地表面はともかく、肝心の内部の接着は全然劣化していなかったことの証明でもあるんです。

新しく入荷した棹石は、旧棹石の文字を丁寧に拓本を取って同じ文字で再彫刻。そして施工は15年前より進歩した現在の方法で行いました。

性質の異なる2種類の接着剤を併用しています。一つは硬化後も弾性を有する変成シリコン系接着剤、今一つは硬化せずに長く粘着性を有するブチル系接着剤です。

それぞれ団子状に配置し、石が重なりつぶされることで十分な接着面積を確保できます。以前の施工でも問題はなかったのですが、今回もきっと石をしっかり保持し続けてくれると思います。

石の色や目の大きさも、うまく15年前のものと合ってくれました。石によってはこれが難しいこともありますし、石そのものが既に採掘を終えていることもあったりします。

ありがたいことに、今回は運よく事が運びました。お客さんに石を選んでいただく時、石の採掘状況や産地なども頭に入れてお勧めするのが大事だなと、その時に感じたことを思い出しました。

もっとも、採掘がいつ終了になるかなど確認が難しい、というより不可能な場合があるわけで…。ただ極力誠意を持って対応できるよう、正直に臨んでいきたいなと考えます。

ここで、ひとつだけ補足をさせてください。

石は自然の産物である以上、まれに今回のように予期しないことが起こることもあります。大切なのは、そうした時にどのように向き合い、誠実に対応していくかだと私は思います。

お墓は建てたら終わりではなく、長い時間家族の心の拠り所としてそこにあり続けます。建墓の時、最初に石を選ぶ際にも産地や採掘の状況を理解し、正直に説明してくれる石材店と一緒に考えることが、後の安心につながるはずです。

そうした石材店ならば、万一のことがあっても誠意をもって対応してくれることでしょう。今回弊社では、このような対応を取らせていただきました。

これからお墓を建てようとされる方に、こうしたことも石材店選びのひとつの判断材料になります、ということをお伝えしておきたいです。

ご参考ください。

では。


注:石の瑕疵につきましては、いつでもすべてに対応できるということではありません。建墓後の経過年数や状況、そして建墓当時の石材採掘や石材の使い方や考え方によっては、交換などの対応に応じられないこともございます。

※最後までご覧をいただきまして、ありがとうございます。
お墓以外にも石鳥居や記念碑のお仕事も承っております

似顔絵(有)吉澤石材店 吉澤光宏

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