時間が始まらなかったお墓のはなし
2026年2月10日(火)
こんにちは。
川崎市多摩区の石屋、吉澤石材店の吉澤です。
今日は、少し珍しい仕事をしてきました。
2年ほど前に建てたお墓の解体です。

事情があっての解体なので、
詳しいことは書けません。
そして、解体という判断の是非を
私は外から語るつもりはありません。
また、解体を選ばれた方に「後ろめたさ」を
背負わせたいとも思っていません。
事情はそれぞれで、
決断には必ず背景があるのですから。
ただ、石屋として感じたことだけは、
少し書き残しておきたいと思いました。
石屋の仕事は、
お墓を新規に建てるだけではありません。
据え直すこともあれば、引っ越しもある。
そして解体もある。
依頼があれば動く——それは仕事として当然です。
それでも、時に「残念だな」と感じる仕事は
あります。
残念なのは、誰かの判断や事情ではなく、
解体という出来事そのものに対してです。
今日はまさに、そんな日でした。
お墓を建てるとき、
私はいつも「今」だけを見ていません。
完成した瞬間がゴールではなく、
そこから先の長い時間、そのお宅の祈りを
受け止める存在になることを願い、
石を据えます。
節目に手を合わせる日。
ふと思い出して立ち寄る日。
お彼岸や命日だけではなく、
何かあったときに報告に来る日。
そういう積み重ねがあって、
少しずつそのお宅の「お墓」になっていく。
石にとって時間は、
ただ通り過ぎるだけのものではありません。
雨に濡れ、乾き、陽に当たり、冷えて、
また温まる。
お参りする人の手が触れ、花が供えられ、
線香の煙が流れる。
そういう積み重ねの中で、
石という「物」からお墓という「場」に
変わっていくのだと思います。
だから、まだ新しいお墓を解体するというのは、
どうしても残念です。
まだ、時間が始まっていない段階で、
終わりを迎えてしまうからです。
とはいえ、石屋には石屋の現実もあります。
感傷に浸ってばかりではいられません。
石屋にとって、
解体は単に「壊す作業」に留まりません。
完成してしまえば見えなくなる部分を、
内側から確かめられる機会でもあります。
見えない部分ほど、施工の差が出ます。
だから普段から、そこに手を抜かないよう
心がけています。
接着剤は適切に配されていたか。
そしてどう効いていたか。
衝撃を受けても、追従できる状態だったか。
自分の施工が正しかったか。
普段は「何も起きない」ことでしか判断できない
ところを、実物で見ることになります。
そして今日、それを見ました。
結果は、施工としては100点に近い状態でした。
変成シリコンはしっかり効いていて、
ブチルも粘着性がしっかりと残っていた。

「材料が良い」という話だけではなく、
清掃や塗布、圧着の加減も含めて、狙い通りに
なっていた。
解体面を見ると、それがはっきり分かります。
だからこそ、今日の仕事には
うまく表現しづらい気持ちがありました。
壊れてしまったから壊すのではない。
ぐらついたから直すのでもない。
ちゃんと出来ていて、何事もなければ、
これから時間が積み上がっていく。
それが、そこで終わってしまう。
もちろん、解体を選ぶ方を
責めているのではありません。
事情があって、
それを選ぶしかなかった判断がある。
そして、その判断は重い。
背景を知らない側が、
軽々しく是非を言うのは違うと思います。
そこは私は一線を引きます。
石屋として私にできることは、ひとつだけです。
その状況の中でも、最後まで丁寧に扱うこと。
そして、自分の手で作ったものが、
お墓として、何の問題もなく
きちんと建っていたこと。
それを確かめることができました。
施工としてはベスト。
だからこそ、残念な思いが残る。
そんな一日になりました。
石屋にはこうした日もあります。
では。
※最後までご覧をいただきまして、ありがとうございます。
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