解体が早く終わると、手放しで喜べないわけ

2026年1月5日(月)


こんにちは。川崎市多摩区の石屋、吉澤石材店の吉澤です。

お墓の解体作業というのは、
一般の方が立ち会う機会はあまりありません。

完成したお墓は見ても、
その「終わり」を見ることは少ない。

でも石屋にとって、解体は大事な学びの場です。

何十年も前の石屋さんが
どんな仕事をしていたか。

解体してみて、
初めてわかることがたくさんあります。

今日は、印象に残った二つの現場の話をします。

現場その1:小さな金具の話

ある現場での出来事です。

石材をクランプという道具で
吊り上げようとしました。

まだノミで叩いたり、
剥がす作業をする前の段階です。

試しに一度、テンションをかけてみたら──

なんと、あっさり持ち上がってしまいました。
しかも隣接した部材まで、3本いっぺんに。

石を外してみると、
石の合わせ目が荒らされていませんでした。

実はこの上に据え付けてあった
羽目石という囲いも、
すぐに外れてしまったんです。

ここで、前の石屋さんの施工がどうこうと、
言いたいわけではありません。

その時の状況もわかりませんし、
ただ事実として、簡単に外れたということです。

それでも、納まっていた理由

でも、ここで一つ疑問が湧きました。

部材がつながって外れてしまうほど、
接合が弱かったはずなのに、
なぜ今まで外れずに納まっていたのか。

答えは、これでした。

小さなステンレス製の補強金具です。

形はいろいろありますが、
こんな金具が連結部分(合口=あいくち)に
入っていた。

この小さなものが、
何十年も石が動いたりズレたりするのを
防いでいたわけです。

こうした補強金具なんて意味がない、
という人もいるかもしれません。

確かに、大きな地震のような強い力の前では、
小さな金具でお墓の形を守りきるのは難しい。

私自身、能登半島の災害支援で
倒壊した墓石をたくさん見ました。

お墓の形を完全に保つという意味では、
限界があります。

それでも、日常の小さな動きや経年変化で、
石が少しずつずれていくのを抑える。
ズレ止めとしては効く。

万能ではありませんが、
ズレやガタを抑えるという意味では、
入れておく価値はあると思っています。

どんな金具であっても、
施工するにはひと手間かかります。

完成したら誰も見ない。お客様も気づかない。

でも、その手間が長い時間を支えているのです。

モルタル施工としては合口も荒らしておらず、
すぐ持ち上がってしまった。

正直、施工としてはいま一つでしたが、
金具を入れたことが功を奏していたんだなと
感じました。

現場その2:想定より早く終わった理由

別の日の解体工事です。

石塔を取り外すまで作業をして戻りましたが、
考えていたよりも早い時間に
帰社することができました。

「あ~、よかった!」

ん?ちょっと待ってください。

ということは、
思ったよりも容易に外すことができた
ということですよね。

これってどうなんでしょう。

解体が早く終わるのは、喜べない

解体の見積もり時には、
ここは「こういう」施工がしてあるだろうから、
外すのに「このくらい」の手間がかかる
──そんなことを考えていくわけです。

それはつまり、この場面では「このくらい」の
外し手間がかかる施工方法が、
採られていて然るべきということ。

それがふたを開けたら、結構あっさりと。

自社施工でないお墓は本当にわかりません。
端的にいえば、施工上ちょっと残念な状態でした。
いや、残念というレベルではありませんでした。

石を持ち上げてみると、
目地だけコーキングで、合わせ目には接着剤が
全くなし。

しかも石の接合面はほぼフラットで、
構造的に噛み合わせもない。

解体するには楽でよかった。

でもこれって、
本当は長い年月そこに建ち続けるはずだった
ことを考えると、決して喜べない。

「えー、こんなやり方しかしてないんだ」
っていうことです。

手抜きと、不完全は違う

場所・施工時の季節や天気・お墓の形……。
たとえ同じ墓地内でも、
現場の状況は一つ一つのお墓で
すべて違ってきます。

だからどんな石屋さんでもいつでも完璧、
100点満点というのは至難の業でしょう。

しかし。

しっかり施工しようとして、
結果的に想定より良く施工できなかった、
という事象と、最初から楽をして、
見えないところを抜いた仕上げの事象。

石屋の目で見れば一発で判断できるものです。

この現場は明らかに後者でした。
残念ですが、擁護の余地はありません。

同じ「解体」でも、意味が全く違う

二つの現場を通して、改めて思います。

最初の現場では、小さな金具が
ちゃんと入っていた。

ひと手間かけてあった。
それが長い間、石を支えてくれていました。

二つ目の現場では、
見えないところが抜いてあった。

解体が早く終わった裏には、
喜べない理由があったのです。

石屋の矜持

プロだからこそ、
合格点を超える施工を目指す。
そんな矜持を持たなければいけないはず。

完成した時、
お客様は見えないところまでは確認できません。

でも何十年か経って、
誰かが解体する時には、すべてが見えます。

その時に恥ずかしくない仕事をしているか。

今日、私が施工する金具を見るのは、
何十年後の誰かです。

今日、私が塗る接着剤の有無を知るのも、
何十年後の誰かです。

その時、解体する石屋さんが
「ああ、ちゃんとやってあったな」
と思ってくれれば、それでいい。

派手な話ではありません。

ただ、見えないところに手間をかける。
それだけのことです。

でも、それが職人の仕事だと思っています。

これからお墓を建てる方には、
完成時の見栄えだけではなく、
こうした見えない部分があることも、
知っていただければと思います。

では。

※最後までご覧をいただきまして、ありがとうございます。

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(有)吉澤石材店 吉澤光宏

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