「水を吸う石はダメ」は本当か? ネットで迷子にならない石の見方
2025年12月16日(火)
こんにちは。川崎市多摩区の石屋、吉澤石材店の吉澤です。
前編では、初めてのお墓相談で
「何を聞けばいいか分からない」ときに、
まず何を整理すればいいかを書きました。
後編は、その次の段階。
石を選ぶときに、ネットの情報で
迷子にならないための話です。
最初にお断りしておきます。
ここで書く「吸水」は、石の良し悪しを
決める話ではありません。
ネットで見かける情報に振り回されない
ための、ひとつの例として取り上げます。
石はどれくらい持ちますか?
結論から言うと、
日本の石でも外国の石でも、人の一生くらいの
時間の流れの中では、そう大きく変わらない
ことが多いです。
もちろん、何でもいい、
という意味ではありません。
石屋として見ていて
「これはあまりおすすめできないな」
という石は、最初から外して提案しています。
外国産の石材でも、変化があまりにもある石や、
実際に使われてあまり評判が良くない石に関して
はおすすめしません。
多く使われていて、
実績のある石を中心にお勧めしています。
そしてもちろん、日本の石は得意です。
石材業界の中で過ごす中で、自分が作ってきた
関係性があります。
同じ石でも、より信頼できる業者さんと
お付き合いし、そのルートを最大限に
活かしてご提案しています。
国産の石材でも、仕入れ先(業者さん)によって
仕上がりの印象が微妙に変わることがあります。
だから私は、金額の高い安いで選ぶのではなく、
できるだけ質の良いものを使いたいと考えています。
私が「安心して使える」と言えるのは、
私自身が扱ってきた石と、
信頼できる取引先の範囲です。
その範囲で、責任を持ってご提案します。
「水を吸う石はダメですか?」
ここは、ネットの情報で迷子になりやすい
ところです。
吸水の話を例に、見方の順番を考えてみます。
「水を吸いにくい石が良い」
「水を吸う石はダメ」
こういう単純な話になりがちですが、
現場の感覚として、私はそう思いません。
水の吸い方だけで、石の良し悪しは測れない
からです。
たとえば、最高級の石材といわれる香川県産の
庵治石だって、水を吸います。神奈川の小松石や
愛媛の大島石だってそうです。

庵治石でも、水は吸います。『吸う=悪い』ではありません。
でも、だから価値が落ちるかというと、
断じて、そんなことはありません。
大事なのは、吸うか吸わないかだけではなくて、
-
吸ったときに、どれだけ目立つか
-
乾いたときに、どう戻るか
-
風合いとして、どういう表情になるか
石にはいろいろあります。
数字は目安です。
でも最後は「見え方」と「相性」です。
石の強度や吸水率など、スペックで
整理したくなる気持ちも分かります。
ただ、天然素材の石は、サンプル材をもとにして
数値を測っています。広大な採掘場の、
ほんのひとかけらです。
その数字だけで、すべてを言い表すのは難しい。
私はそう思っています。
だから私は、数字を否定するのではなく
「参考にしつつ」、最後は自分の目で見てきた
景色や、実際の使われ方、経年の表情も含めて
石を紹介したい。
不安が大きいほど、
人は数字に寄りかかりやすいからこそ、
数字だけで迷子にならないように、
順番を考えていきたいんです。
具体例:芦野石・白河石の話

白河石。芦野石も同系統の石で、御影石とは違う“風合いの良さ”があります。
私は、栃木の芦野石・福島の白河石が好きです。
大谷石ほど軟らかくはないけれど、御影石ほど
硬くない。いわば中硬石です。
この石は水もよく吸います。
経年で色味が深くなったり、
立地によっては苔がついたり、
樹液の汚れが出ることもあります。
研磨しても、御影石のようなツヤは出ません。
じゃあ、ダメな石なのか。
私はそうは思いません。
磨いた御影石とは、目指している良さが違う。
落ち着きと味わいがあって、いい石の一つだと思っています。
「凍害が心配です」――そこまで気にしなくて大丈夫
凍害の話も、ネットで勉強してきたなあ、
と思われるお客さんから時折聞きます。
北海道のように零下十何度にもなる地域なら、
話は分かります。
ただ、関東近郊でお墓を考えるときは、
私は「そこまで神経質にならなくて大丈夫」
と考えています。
石のスペックを先に心配するよりも、
まず確認したいのは環境です。
-
水が溜まりやすいか
-
日当たりはどうか
-
風通しはどうか
-
普段どんな濡れ方をする場所か
こういう条件のほうが、
現実のトラブルに直結しやすい。
だから私は、石だけで心配を大きくしないように、順番からお話します。
何をもって「良い石」とするのか
結局は、お客さんが何をもって良しとするのか。
そこなんだと思います。
価格なのか。
実績なのか。
産地なのか。
色なのか。
硬度なのか。
吸水なのか。
どれが正解、という話ではありません。
人によって、安心できるポイントが違う。
だから私は、いきなり石を決める前に、
まず「どこが一番大事ですか?」と聞きたいんです。
その“良し”が見えてくると、
石選びは一気に迷いにくくなります。
数字は参考にしつつ、最後は見え方と相性。
その前提で、順番を整えて決めていけば大丈夫です。
必要なところから、一緒に考えていきましょう。
では。
※あわせて読みたい(関連記事)
・初めてのお墓相談、何を聞けばいいか分からない方へ(前編)
・数字の幻影。吸水(率)で石は計りきれない。(2017/12/9)
・晴れ、雨、雨上がり。石の吸水について川崎登戸の町石屋が思うこと。(2016/10/30)
・石の性質をどう量るか。石屋の目線で考えてみた(2016/4/24)
![]()
※最後までご覧をいただきまして、ありがとうございます。
現地確認。お見積り・ご提案はすべて無料です。
(有)吉澤石材店 吉澤光宏
ご相談・お問合せは、お気軽にどうぞ。
電話 044-911-2552 (携帯転送なので外出先でもつながります)
メール お問い合わせフォーム


