墓じまいの前に、思い出したい『お墓の良さ』

2025年12月14日(日)


こんにちは。川崎市多摩区の石屋、吉澤石材店の吉澤です。

最近は「墓じまい」という言葉が、ずいぶん
当たり前に聞かれるようになりました。
負担や管理のこと、跡継ぎの不安。
お墓には悩みもつきものです。

ただ、石屋としてご家族のそばにいると、
その一言だけでは語りきれないものがあるな、
と感じます。

今日は、そんな話です。

悲しみが心の作業に変わる場所

身近な方を亡くしたあとは、
気持ちの整理は、なかなかつきません。

だからこそ、手を合わせに行ける場所がある
ことが、大事なんだと思います。

日常の慌ただしさから少し離れて、
手を合わせる。

胸の奥に残っている気持ちを、
少しずつ、ほどいていく。

お墓って、そういう「心の作業」を支えてくれる
場所でもあるんですよね。

毎日じゃなくてもいい。
行けない日だってある。
でも、そこに行けば手を合わせられる。
会いに行ける場所がある。

それだけで、救われる時期があると思います。

納骨の時間に思ったこと

今日は、11月に建てた夫婦墓での、
納骨の立ち合いでした。

納骨の時間は、やはり特別です。

二人用の納骨室。
そこに奥さんのお骨を納めました。

終えてから、ご主人が言ってくださいました。
「本当にお世話になりました」と。

その一言が、胸に残りました。

洋型石塔の側面には、
ご夫婦のお名前を刻んであります。

ただ、ご主人のところには、命日と行年が
まだ入っていません。

いずれ、そこに文字を入れる日が来る。

その時まで、どうか穏やかに過ごしてほしいな、
と思いました。

時を超えて、受け継がれる思い

お墓は、年数が経てば経つほど、
別の顔も見えてきます。

それは、家族の記憶を次の世代へ手渡す、
記録としての顔です。

墓石に刻まれた戒名や俗名。建立年。施主名。
そこには、その家の歩みが詰まっています。

お彼岸やお盆に墓前で手を合わせながら、
親や祖父母が子どもたちに、ふと昔の話を聞かせる。

写真やアルバムとも違う。
生活に近いところで、家族の思いが
バトンのように次に伝わっていく。

だからこそ私は、刻む文字や石の佇まいが、
年月が経ってもきちんと残るようにしたいと考えます。

数字では測れないけれど、お墓には、
そういう働きが確かにある気がします。

その積み重ねが、建てたあとに、
じわじわと効いてくるのだと思います。

大切にしていること

こういう時間を、ちゃんと迎えられるように。
その先の何十年を、ご家族が無理なく
手を合わせられるように。

吉澤石材店として大切にしているのは、
「安心を、仕事で残すこと」です。

そうした視点で、一件一件のお墓に
向き合っていきたいと思っています。

では。


※このブログでは、現場のことや、石屋として考えている
ことを、少しずつ書いています。
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