【日本人の…】を忘れちゃいませんか?

2025年10月20日(月)


こんにちは。川崎市多摩区の石屋、吉澤石材店の吉澤です。

最近、「海外ではこうした葬送の形が主流になっている」「他国の葬儀は明るくて参加しやすい」といった記事を目にすることがあります。

例えば、キリスト教徒の方がキリスト教式で葬儀を行うのは当然のことです。そして、同じように、日本人が仏式や神式で葬儀を行うのも当然のことです。

それぞれの信仰や文化は、等しく尊重されるべきものだと私は思います。

ただ、ふと疑問に思うのは――なぜそれを「比較」する必要があるのか、ということです。

そして、そうした比較の中から、いつの間にか『日本人の』という枕詞が抜け落ちていることに気が付きました。

日本人の葬儀とお墓に流れるもの

葬儀は人を送るだけの行事ではありません。そしてお墓も遺骨を納めるだけの場所だけではありません。そこには「生きてきた人と、残された人をどうつなぐか」という思いが流れています。

お経の一語一語は分からなくても、その声の響きの中に、どこか追慕の思いを感じる。焼香や合掌の所作の中に、言葉にならない供養の念が宿っている。

その感覚は、長い時間をかけて培われてきた、私たち日本人の祈り方、そして死者との向き合い方なのかもしれません。

石屋の仕事をしていると、お墓の前でお参りするご家族の姿を見かけます。

先日も納骨の際、亡くなった親に「これでまた一緒になれたね。夫婦で仲よくね。」と声掛けしている方がいました。

故人のことを思い出しそっと涙ぐんだり、無事に送り出された安心からか、静かに笑顔になる方も少なくありません。

葬儀で流した涙と、お墓で見せる穏やかな表情。その両方が、日本人の祈りのかたちだと思うのです。


宗教学や民俗学の世界でも、日本人の死生観は「死と生の連続性」に重きを置くと言われます。

西洋の宗教が「死後に神のもとへ行く」と考えるのに対し、日本では「亡くなった人は家や土地にとどまり、共に生きている」という感覚が根底にあります。

「海外ではこうだ」と言う前に

最近は「欧米ではこう」「諸外国ではこんな新しい葬法が」といった比較が盛んです。

でも、文化や祈りに“進んでいる”“遅れている”という物差しはありません。

キリスト教の国にはキリスト教の祈りがあり、日本には日本の祈り方がある。

アメリカ人が牧師や神父の言葉に耳を傾けるように、日本人は僧侶の読経の声に心を静めて聞き入る。

それはどちらが上でも下でもなく、ただ、それぞれの文化が育んできた“祈りの在り方”なのです。

文化は流行では育たない

最近は、新しい葬送方法や埋葬方法があり、それらが話題になります。

私はそれ自体を否定するつもりは、まったくありません。

ただ、どんな形であれ、それが“文化”と呼ばれるようになるには時間が必要です。

文化人類学の視点でも、ひとつの習慣が文化として定着するには、少なくとも世代をまたぐ時間が必要だと言われるそうです。

文化は人の一生より長い時間をかけて育つもの。そして日本の文化を育ててきたのは、私たち日本人そのものです。

「海外では」や「新しいから」という言葉に惹かれることもあるかもしれません。

でも、その前に一度立ち止まって、「私たちはどう祈ってきたのか」を思い出してみる。それも、これからの供養を考えるうえで、大切なことかもしれません。

おわりに

納骨に立ち会うと、ご家族の言葉やしぐさの中に、長く受け継がれてきた日本人の死者との向き合い方が、自然に表れているように感じます。

それは、形ではなく、心の底に流れる日本人としての祈りの姿なのだと思います。

今、私たちはそれをどう受け継いでいくのか。それを問われているのかもしれません。

石屋として、私はこれからも、お墓を通じて日本人の祈りのかたちを見守っていきたいと思っています。

――私たちは、『日本人の』という言葉を、いつの間にか置き忘れてはいないでしょうか。

では。


※補足)仏教の中でも宗派によって、死後の世界や祈りのとらえ方には違いがあります。たとえば真宗では、亡くなった方は阿弥陀如来の本願によって、すなわち極楽浄土に往生すると説かれます。
それでも、ご家族が仏壇やお墓の前で手を合わせる姿には、「遠くへ行ってしまった」というよりも、「今も共にある」という思いが自然に表れています。教えの違いを越えて、そこに流れているのは――亡き人を敬い、思いをつなぐという日本人の祈りの心なのだと思います。

※最後までご覧をいただきまして、ありがとうございます。
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似顔絵(有)吉澤石材店 吉澤光宏

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