お墓の寿命は? 15年なんてまだ序の口 ― 施工の確かさを再確認
2025年8月27日(水)
こんにちは。川崎市多摩区の石屋、吉澤石材店の吉澤です。
「お墓の寿命ってどのくらいなんだろう?」
そんな疑問をお持ちの方も少なくないと思います。10年や20年で壊れてしまうのではと心配される声も耳にしますが、実際はどうでしょうか。
ここ数日のブログで、お墓参りやお墓じまいについて触れてきましたが、今日は現在取りかかっている解体工事の現場について記しておきます。対象は建立から15年が経った墓所です。
建立当時の姿
まずは15年前の建立当時の写真です。石塔・外柵ともに御影石で仕上げた墓所で、石の接合部には接着剤、補強としてステンレスの金具を配して、しっかりとした施工を行いました。

建立から15年。しっかりとした御影石の墓所、当時の姿
基礎コンクリートの比較
解体にあたり外柵を外すと、施工当時の基礎コンクリートがそのまま現れました。砕石を敷き、鉄筋を組み、コンクリートを打設した上で十分な養生期間を取り、そのうえで据付を行ったものです。まさかこんなに早く基礎コンクリを目にするとは思ってもいませんでした。

左:15年前の基礎施工時 右:今回の解体で現れた基礎。当然、劣化箇所は見られず
今日、基礎コンクリートの破砕を行いましたが、写真を撮り忘れてしまいました。でも、15年経っても劣化は見られず、斫り作業も容易ではありません。鉄筋が多く入っているので半分程度で時間になってしまいました。それにしても、長期使用を前提とした施工の確かさがここでも確認できます。
接着剤施工と解体作業

白:流し込むタイプ/グレー:団子状に使うタイプ(いずれも変性シリコン系接着剤) 剥がした跡がザラザラに残っている
取り外した石材を見ると、接着剤は今も十分な強度を保っていました。白色は流し込みタイプ、グレーは団子置きタイプの弾性接着剤。どちらも変性シリコン系で、柔軟性を持ちながら石を強固に接着しています。(当時仕様の接着剤・工法です)
モルタルで据えた昔ながらのお墓とは違い、接着剤施工の場合は縁が簡単に切れて外れることはありません。そのためドリルで穴を開け、せり矢を打ち込んで押し広げるようにして剥がしていきます。今回は右側が更地だったため、押し広げた石が逃げるスペースがあり、作業は比較的助かりました。

接着が効いているほど剥がした跡は荒れて残る。施工の確かさの証
接着が効いているほど、剥がした跡は荒れて残ります。両側の石の面にしっかりくっついているため接着剤そのものがメリメリ引きちぎられてしまうからですね。
石材の処分と立地条件
石塔などの大物は、そのままでは処分場で受け入れてもらえません。そのため、会社に持ち帰った後にいくつかに割り、処分場へ搬入します。

石塔などの大物は、そのままでは処分できないため、小割にする
一方で、現場でどうしても割る必要が出てくるのは、参道が細かったりクレーンが入れない墓地など、搬出経路に制約がある場合です。今回の現場は車からも近く、カニクレーンを搬入しての作業も可能だったため、現場では割らずに会社に持ち帰って処理しました。
このように「石をどう処理するか」は現場の立地条件によって変わります。今回は条件的には良い方の墓地。しかし細い参道の奥や階段を上がった山の上では、人力で石を運び出すしかありません。同じ広さ・同じ規格のお墓でも、立地などの条件によって必要な人員や時間は全く違い、その差が費用に直結します。
つまり「お墓じまいの費用」とひと口に言っても、単に石の大きさや区画の面積だけではなく、周囲の環境や搬出経路の条件が大きく関わっているといえます。
まとめ
今回の墓所は施主様のご事情により、同じ墓域内の合祀墓へご両親のご遺骨を移すことになり、個別の墓所は解体となりました。石材も基礎もまだ十分に健全でしたが、予定どおり作業は進んでいます。
お墓の解体は単に「壊す」というより、当時積み重ねたものを一つひとつほどいていく作業のように感じます。どこまでしっかり作れていたかを確かめる、いわばテストの答え合わせをしているような感覚でもあります。そして、正直なところ、石屋としてはしっかりと作ったものを自分の手で壊していくのは、寂しい気持ちでもあります。
それでも、15年を経ても外柵の構造にいささかも揺るぎがなかったのを目の当たりにして、「この施工は確かだった」と胸を張れる思いです。お墓の解体作業は寂しさと同時に、そうした確かさを実感できる、そんな時間でした。
車や家電とは違い、家ともまた違う。50年、100年、いやそれ以上の時間を越えていく。そんな息の長さがあるのがお墓です。(今回のような15年での解体となるのはむしろ珍しいことです)
解体の現場であっても、施工の確かさを改めて確認できるのは石屋として誇らしいことです。お墓は一度建てれば何十年と受け継がれていくもの。だからこそ、建てるときに確かな仕事をしておくことが何より大切だと感じます。
明日、残りの基礎コンクリート半分の解体をやってきます。
では。
※最後までご覧をいただきまして、ありがとうございます。
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