お墓に選ばれてきた日本の石――その安心感と価値

2025年8月26日(火)


こんにちは。川崎市多摩区の石屋、吉澤石材店の吉澤です。

日が落ちるのがけっこう早くなってきました。ただ暑さはまだ厳しく、夜もエアコンが欠かせない日が続いていますね。

さて、今日はお墓の材料として使われている石について、少し触れてみたいと思います。
今では中国やインド、ベトナム、カンボジアなど外国産の御影石が主流になっています。産出量も比較的安定していて、色合いや品質に魅力があるので、立派なお墓を建てることができます。実際に多くのお客様がお選びになっており、現場の私から見ても良い石だと感じるものが多いです。(疑問符のつく石はお勧めしていませんのでご安心ください)

ただその一方で、日本にも長い歴史と実績を持つ石たちがあります。外国材が入る前は、当たり前のように日本の石がお墓に使われていて、それぞれの地域で採れる石をそのままお墓の材料として用いてきました。

東京や川崎の近郊でいえば、茨城の真壁石・稲田石、神奈川の小松石、栃木の大谷石・芦野石、福島の浮金石・白河石などがなじみのある石です。いずれも風土に根ざし、長い年月にわたりお墓や建築に使われてきました。

真壁石と小松石の石目の比較写真。関東で使われる代表的な国産墓石材

左:真壁石(小目) 右:小松石

また西日本では庵治石・大島石・天山石などもよく知られる石です。それぞれの地域で大切に使われてきた石で、今も銘石としての価値を保ち続けています。北木石・万成石・備中青みかげ石などもあり、日本各地には地域を代表する石が数多くあります。

庵治石と大島石の石目の比較写真。西日本を代表する国産墓石材

左:庵治石(細目) 右:大島石

国内にはこの他にも各地で良質な石が採られてきました。とてもここでは書ききれませんが、それぞれの地域で長い実績を持ち、大切に使われてきた石たちです。ただ残念ながら、中にはすでに採掘が終了してしまった石もあり、例えば房州石や七沢石などは今では墓石材として新たに手に入れることができません。

当時は流通網が未発達で、石のような重量物を遠くから運ぶのは大変だったようです。だからこそ“地元で採れる石をお墓に使うのが当たり前”だったのですね。

ちなみに、私が子供のころに祖母から聞いた話ですが――伊豆から運ばれた石は河口近くの矢口(やぐち)で川舟に載せ替え、帆を張って多摩川をさかのぼって弊社までやってきたそうです。陸路は道が悪く牛や馬では運びにくかったため、当時としてはこれがもっとも現実的な方法だったのでしょう。

話が少し横にそれました――

ただ何でもかんでも身近な石だからとお勧めをしたいわけじゃありません。もちろん、国内の石にもさまざまな難しい点はあるんです。

例えば小松石は大きめな材料が確保しづらく、場合によっては納期も長めにかかります。真壁石や稲田石は埋蔵量も多く、ある程度安定しているものの、需要の減少はやはり心配。また、栃木の大谷石は加工しやすく耐火性に優れる反面、柔らかいため屋外での長期使用には向かなかったりします。(もっとも最近は内装材として見直されるなど、適材適所で活きる石ではありますが)

あ、ここで付け加えるとすれば、実際にお墓を建てようと考えたとき、多くの方が気にされるのは石の種類や特徴、そしてやはり費用のことです。外国産でも相応の費用はかかりますし、国産を選べばそれ以上になる可能性は高い。これは避けられない現実です。

それでも、「日本の石もある」ということをまず知っていただけたらと思います。昔からの実績と風土に合う安心感、そして「良い石でお墓を建てられた」という誇らしさや納得感は、金額以上の価値をもたらしてくれるはずです。外国産の石にも国産の石にもそれぞれの良さがあり、どちらを選んでも立派なお墓は建ちます。そのうえで検討の材料として加えてくだされば、きっと後悔のないお墓づくりにつながるでしょう。

弊社でもこれまでに、小松石や真壁石をはじめとする国産の銘石を使用したお墓を数多く手がけてきました。各産地と長年のご縁があり、石によっては問屋を通さず産地と直接やり取りできる関係を築いています。もちろん石種によっては信頼できる加工業者や問屋を通すこともあります。大切なのは流通経路ではなく、その石の素性を理解し、見極める目を持っていること。同じ銘柄の石材でも、状態は時によって違いますから、そうした情報をきちんと得られる産地や人との複数のつながりを私は大切にしています。

小松石で建立した五輪塔の施工例。年月を経ても落ち着いた風合いを保つ

小松石で建立した五輪塔。年月を経ても落ち着いた佇まいを見せます

繰り返しになりますが、価格は決して安くはありません。ただ、その価値を理解して選ばれた方にとっては、きっと納得いただけるものだと思います。国産石で建てたお墓には、長く使われてきた実績が示す安心感があります。選んだ方の「目」が確かだったのだと、年月を経てからこそ実感できるはずです。

お墓の石を選ぶとき、国産の石を選ぶかどうかはもちろん自由です。ただ「そういう石もあるんだ」と一度関心を持っていただけたら、石屋としてこれ以上うれしいことはありません。

では。


私のところの仕事は、結果として他所より価格面で高めになることがあります。それは“安さ”を優先するのではなく、“安心と確かさ”を大切にしているからです。

お墓は建てたその日から、その後の長い年月にわたり、ご家族を見守り続けるもの。だからこそ価格だけではなく、長く安心してお参りできるお墓づくりを心がけています。

そうした想いに共感してくださる方のお力になれれば幸いです。

※最後までご覧をいただきまして、ありがとうございます。
お墓以外にも石鳥居や記念碑のお仕事も承っております

似顔絵(有)吉澤石材店 吉澤光宏

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