石のもつ素材感。野面(のづら)を活かした石塔について書いてみた
2025年8月9日(土)
こんにちは。川崎市多摩区の石屋、吉澤石材店の吉澤です。
今日は自然石を使ったお墓について書いてみましょう。
自然石と言うとちょっと変ですね。普通のお墓もみな天然の石を材料として作ってあるわけですから。玉石とか、あるいは石の一番外側の部分である野面(のづら)を使用したお墓と言ったほうが、ここで言いたいことを正確に表していると思います。
もう結構前になりましたが、宮城県で採れる伊達冠石(どろかぶりなどとも)を使ったお墓を作らせていただきました。

伊達冠石(宮城県産)の野面を活かしたお墓
黒っぽく見えているのが切削して研磨した部分です。この写真は完成したばかりなのでけっこう色濃く見えていますが、年を経るごとに石に含まれた鉄分が変色して飴色(あめいろ)へと変わってきます。またその石ごとに模様もはっきりしてきたりします。そして黄土色の部分が野面、つまり玉石である一番外側ですね。
全ての面を切削研磨していないので、一つの石で風合いの違った部分を味わうことができます。こうしたお墓の最大の魅力ですよね。
ただし自然に取れる玉石をそのまま使うため、大きさやお客さんの希望する雰囲気を伝えても必ずイメージに合うものができるわけではありません。

伊達冠石の採石場にて。
せっかく切って形はよかったのに大きなキズが出たりとかで、幾度か切りなおして探っていく部分は必ずあります。最初の写真のお墓も石を決め、切削してからキズが出たため取り直しをしました。そうした加工の手間もかかるため、凝れば凝るほどお墓にするための費用はかさんでいく傾向にあります。
ドンピシャにイメージ通りにハマれば最高に思い入れあるお墓になるかもしれませんが、実際にはある程度イメージの幅を持たせていただくか、あるいは展示してある品物から選ぶのがよいとも言えましょう。
また伊達冠石とは別に、インドの石材を使って似たような雰囲気を持つお墓を提供している南印度洋行という問屋さんがあります。
石の種類は緑系中間色で人気のあるM1‐H。この石も玉石で採れる部分があるようでこの問屋さんではご覧のようなお墓を提案しています。その名も天竺(てんじく)。インドらしいネーミングです(笑)

インドの中間色 M1-Hを使ったお墓
よく見ると野面の部分の感じも個々に違いがあります。色の濃さも一定ではないですし。あと玉石のため、もちろん磨いた研磨面も微妙な違いはありますね。
ひとつの石では再現できない形も石を組み合わせて。製品にするにはかなりのセンスを必要とされるでしょうね。細かい部分では実際に施工をするとき目地材のコーキング施工が上手にできるかな?などと思ってもしまいます。まあ、何とかなるとは思いますが。
最後の写真はこの7月下旬にお邪魔した展示場。
展示場の縁石もいつの間にか天竺バージョンへと変わっていました。
あくまでも私個人としての感覚ですが…一番右の石塔のように野面部分をワンポイントとして利用する方が、中二つの石塔よりも出来上がって「イメージが違う」といったことは少なそうな気がします。また自己主張も強すぎないので、多くの人に受け入れてもらいやすい部分はあるのかなと感じています。どちらにしても製品に仕上げるのにはやはりセンスが要ることでしょう。
伊達冠石の玉石のお墓、そして天竺。いずれもお墓に使われる石が天然のもの、ということを感じてもらえる特徴ある石の使い方だと思います。
叩いて仕上げたり磨いて仕上げたり、そして野面を活かして使ったり。石の魅力は尽きることがありません。
多くの人に石(ほんもの)の価値を知ってもらえると嬉しいです。
では今日はこのへんで。
※最後までご覧をいただきまして、ありがとうございます。
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