小さくとも高品質 犬島石の叩き仕上げ五輪塔!川崎市多摩区の寺院墓地に建立です

2025年7月25日(金)


こんにちは。川崎市多摩区の石屋、吉澤石材店の吉澤です。

私が時折ブログに書く五輪塔は『最高の仏塔』のひとつと言われています。

各部材が空風火水地に相当して宇宙を表しているとかいう話もありますが、そうしたことはともかくとして、亡き人のために五輪塔を建てることは最高の幸せであると私は思います。

もちろん宗教、宗派によってはそうでないこともあるでしょう。

でも亡き人のために五輪塔を建てられることは、最高の供養であり幸せなんだと信じます。

よく塔婆供養なんて耳にしますが、木でできたお塔婆はまさに一枚一枚が供養塔。下の画像、何やら左の木の板に切れ込みが入っています。よく見るとその切れ込み…五輪塔と同じ形なのに気が付きませんか?

塔婆は年回忌やお施餓鬼などの法事の際に建てます。つまり法事のたびに皆で五輪塔を建てご先祖様や亡き家族を供養しているという事なんですよ。まさに造塔供養です。

それをそのお宅のご先祖様の依り代として『石』で作って建立する。まさしく最高の供養の形であり、最高の幸せに通ずるものがあるはずだと思います。

さて、今回は瀬戸内の銘石のひとつ、岡山県産の犬島石で作られた叩き仕上げの五輪塔をご紹介します。先日近くのお寺さんに建立してまいりました。

入荷して組んでみた様子です。2尺塔なので高さは約60㎝と小さいながらも、堂々としたたたずまい。奈良県の西大寺奥の院にある叡尊塔という鎌倉期に建てられた名塔をイメージして作製されています。

接着剤がはみ出ないよう、細心の注意を払いつつ(表から少し逃げた位置に)接着剤を配して接着していきます。

また、この塔は限られた大きさゆえに各部材の接地面を大きく取れません。そのためステンレスの芯棒を入れて接着強度も高めます。

石を叩く際にはあまり力が入り過ぎれば角が欠け、吹き飛んでしまいます。

また特に小さめの塔では各部材も小さいため、叩くことで石が踊ってしまいこれまた作業がしにくくなります。

加工は大きければ大きいなりの、小さければ小さいなりの難しさがあり、それぞれに高い技術が要求されます。手加工はもとより、電気やエアの工具を使ったとしても使い手はあくまでも人。道具を使うから手軽にできるなんて絶対にありえません。

逆に言えば技術を持つ職人が使うからこそ、はじめてそれぞれの道具・工具が生きてくるということです。

もし石を欠いてしまえば、もうそのお墓に使うことはできません。石の加工はいつでも真剣勝負ということですね。

そうした条件を乗り越えて生み出された五輪塔。上の写真の繰型座(くりかたざ)をご覧になれば品質の高さを感じていただけるのではないでしょうか。

実際にお墓に建てあがった様子です。大きさは小ぶりでしょう?

でも凛として建っています。それでいながら犬島石のほんのりと淡い暖色系の石肌。白御影石の範ちゅうでありながらも、優しさや温かみを感じさせてくれます。

実際に見ても貧弱さはまるでありません。むしろ可愛らしさを感じさせてくれて思わず撫でたくなるような…。

今回は奥様を亡くされた旦那様がお建てになりました。亡き人を思い建立する塔として、とても合っているような気がいたします。

当然のことながら、このサイズの石塔でも通常の石塔を建てる時と変わらぬ工法をもって建立しています。

石同士の接着にはいつものように性質の異なる二種類の接着剤を使用して、お互いの苦手な部分を補い合うように。大きな地震や災害の際にも少しでも丈夫なようにと願い施工をしてきました。

お花やお線香を供えるため、花筒などはどうしても通常のサイズになるので少し離れめに配置してあります。

叩き仕上げなので経年で少しずつ汚れなどが付いていきますが、むしろこの仕上げの場合にはそれが良さになっていきます。

お庭の灯籠や古(いにしえ)の仏塔は、みな苔や経年の汚れをその身に纏い、味わい深く成長してきました。いや、この場合には既に『汚れ』とは言えませんね。時間をスパイスとした良きエイジングというべきなのかもしれません。

今回は叩き仕上げの五輪塔をお選びいただきまして、誠にありがとうございました。


ところで、この犬島石を使った五輪塔。実は昨年同サイズで別の場所でも建立させていただいておりました。

こちらは供養塔としての建立です。花立やお線香立ても本体に合わせたサイズで作製しました。

よく『供養塔はメインの石塔よりも大きく建てるものだ』という考え方もありますが、果たしてそれが絶対でしょうか?

もちろんご先祖様を敬い畏敬の念をもって接するべきなのはわかります。でもせっかく子孫が建立してくれた供養塔が小さかったからってご先祖様は立腹されたりするのでしょうか?

それ以上は申しませんが、ご自身に置き換えて考えれば答えは簡単に出てきますよね。

今回の五輪塔を提案するとき、この去年建てた五輪塔に会ってきました。心なしか誇らしげに胸を張ってメインの和型石塔の横に建っていたような気がしました。

―さて、

私はお墓を設計するとき、大きさや高さにはけっこう気を遣います。周りのお墓との相関関係はどうかなとか…。それは目に見える部分であり大事なところだから。

でもその一方で、こうした可愛らしく感じる塔を建てることで、お墓って大きさが大事なのではないなとも思うんです。

相反する思いに困惑するのですが、結局はお墓を建てる人の思い…それが石塔の大きさによって強くなったり弱くなったり変わるわけではないと感じます。

どんなの大きさの石塔を建てるか、どんな形の石塔を建てるか。最終的にはお施主さんの感性や思いで決まってくるのかもしれませんね。

私はそんなふうに思いながらお客様へのご提案を行っています。

※最後までご覧をいただきまして、ありがとうございます。
お墓以外にも石鳥居や記念碑のお仕事も承っております

似顔絵(有)吉澤石材店 吉澤光宏

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